居住者の高齢化が進んだマンションで、共有部の出入り口をバリアフリー化する工事への関心が高まっている。
大規模修繕にあわせて行うケースが多い。工事費用の補助などを行う自治体もある。
1975年築の「東建砧マンション」(東京都世田谷区、6階建て57世帯)は2011年、マンションの外から建物出入り口に通じる道に、車いす用スロープを設けるなどの工事をした。3回目の大規模修繕時に行った。
理由は居住者の高齢化。出入り口に段差があり、車いすで移動できない、買い物カートの持ち上げがつらいといった声が寄せられていた。また、介護事業者も器材搬入に苦労していた。
このため、組合は09年からスロープ設置などの検討を開始。NPO法人マンション管理支援協議会(東京)の助言を受けながら、具体的な施工場所を決め、公募で業者を選んだ。住民に対してもアンケートをしたり、説明会を開いたりして、同意を取り付けた。
最終的には、出入り口のスロープ設置に加え、共用廊下などにあった計10か所の段差を解消。外からすべての自宅まで、段差なしで移動できるようになった。工費は約350万円。同マンション管理組合理事の近藤穣さんは「住民が長く快適に暮らすための工事ができた」と振り返る。
年間200件以上のマンションの大規模修繕を手がける長谷工リフォーム(東京)でも、共用出入り口のバリアフリー工事の受注は増えている。内容は、スロープや手すり、床の滑り防止加工、自動ドア化、エレベーターの設置など。03年の改正ハートビル法(現バリアフリー法)施行で、マンションにも段差解消などが求められるようになった。工事の大半はそれ以前に建てられた物件。20年以上前の物件では、階段に手すりすらないものもあるという。
同協議会理事の羽鳥修さんによると、手すりや柵を設け、滑り止め用タイルを敷いたスロープ1か所を作る標準的な費用は、250万~400万円。「まとまった費用が必要な大規模修繕に合わせると負担感は少ないはず」という。
共用部のバリアフリー化を支援する自治体もある。横浜市はスロープや手すり、エレベーターの設置に、工費の3分の1、最大30万円を補助。京都市も段差解消や手動ドアの自動ドア化などに、工費の2分の1、最大100万円を補助する。東京都では、住宅金融支援機構から融資を受けるなどすると、金利が1%低くなる利子補給を行っている。公益財団法人マンション管理センターのホームページ(http://www.mankan.or.jp/)では、助成制度がある自治体を紹介している。
羽鳥さんは「管理組合理事会は、定期的にアンケートを行うなど、日頃から住民の暮らしの問題を把握しておくと、資金計画も立てやすく、住民の理解も得やすいでしょう」と話している。