能登半島地震:発生から2年 輪島市の街並み、ほぼ回復 /石川

3月26日17時2分配信 毎日新聞

 ◇被災者ら「長かった」「終わりはない、頑張らないと」
 能登半島地震から25日で2年が経過した。被災地では住宅再建が進み、被災者は元の生活を取り戻しつつある。輪島市では発生時刻の午前9時41分、防災無線でアナウンスが流れた。この日は観光名所の輪島朝市が定休日で、市内には観光客の姿もまばら。住民らは静かに復興を祈った。【栗原伸夫】
 同市門前町の総持寺では、復興を祈願する法要が行われ、梶文秋市長らが出席。総持寺通り商店街会長の五十嵐義憲さん(61)ら被災者も参加した。
 商店街では、加盟39店のうち37店が被害を受けたが、1店を除き再建された。廃業した店は一つもない。後継者不足など課題は多いが、街並みはほぼ元に戻った。五十嵐さんは「通りに出て走り回ったが、何をすればいいのか分からなかった」と振り返る。割れた店先のタイル床を5月に修理する予定で、この2年を「長かった。やっとという感じ。思い出したくない気持ちもある」と話した。
 ◇仮設のお年寄りをボランティア訪問
 同市山岸町の仮設住宅では、神戸大の学生らがボランティア訪問。足湯で入居者らの苦労をねぎらった。元入居者で市営住宅に引っ越した大吉信光さん(77)は「楽しかった。最高です」と上機嫌。得意の歌も2曲披露し、拍手を浴びた。来月に災害公営住宅に入居する予定の岡満恵さん(74)は「被災に終わりはない。3年目が始まるので、頑張らないと」と話した。
 ◇自営業者なお支援--輪島市長
 輪島市の梶文秋市長はこの日、記者会見で「災害公営住宅の建設などで復興の形は見えてきた。漆器などの自営業者はまだ経営が厳しく、支援していかなければ」と述べた。防災対策では「地域が避難所や要援護者などを考え、市も支援していきたい。災害公営住宅の入居者が新たに町内会に入り、広い地域で防災を考える必要がある」と話した。
  ◇    ◇
 能登半島地震は07年3月25日午前9時41分に発生した。マグニチュード6・9、最大震度6強。県内では1人が死亡、338人が重軽傷を負い住宅2426棟が全半壊した。輪島市など2市2町でピーク時に329世帯、736人が仮設住宅に入居。4月末が入居期限で、同市は49戸の災害公営住宅を建設した。穴水町は民間が建設した集合住宅を借り上げ、12世帯が入居する。

アーケード改修工事遅れ 資材不足、予想外の腐食 熊本市・下通商店街 5月末に完成ずれ込む

3月23日7時7分配信 西日本新聞

 熊本市中心部の下通商店街のアーケード改修工事完了が、当初予定の3月末を越え、商店街への引き渡しが5月末にずれ込む見通しになった。北京五輪などで鉄骨が不足し工事が一時中断した上、アーケードの支柱の腐食が予想以上に進んでいたのが原因だ。現在は屋根の取り付けや歩道のタイル張りが行われており、商店主達は「早く完成して欲しい」と工事の行方を見守っている。

 アーケードが改修される工事区間は同市下通1丁目から新市街にかけた二、三、四番町で延長360メートル。老朽化した屋根を撤去し、照明に消費電力が少ない発光ダイオード(LED)を使用するなど「環境配慮型」の商店街を目指そうと、商店主らでつくる「下通繁栄会」が昨年9月25日に着工した。

 だが、北京五輪の影響で鋼材の需要が増加。鉄骨の納入が遅れたため、屋根を撤去した10月中旬から約1カ月間、工事がストップした。

 さらに、着工後の調査で柱の腐食が予想以上に進んでいたことが判明。江戸時代初期まで、白川が同商店街近くを流れており、現在も残る地下水脈が「腐食を最大で5倍は早めた」(同繁栄会)という。このため、予定以上に柱のサビ取りや補強工事も必要になり、さらに完成が遅れる事態になった。

 約9億5400万円を見込んでいた事業費も最終的に数千万円は膨らむ見通し。完成後は微粒子の霧を発生させて体感気温を下げる自動霧発生装置や太陽光パネルを備えた最新型のアーケードが誕生。パネルでの発電で照明費などを補う。

 下通繁栄会の高柳隆大アーケード改修委員会委員長は「完成が遅れてご迷惑をかけるが、長く快適に使えるアーケードになる。事業費の高騰分は加盟店に理解を求めていきたい」と話している。

不況が福祉の現場直撃 障害者就労支援施設

3月16日6時12分配信 河北新報

 急激な景気悪化で、製造業などの下請けを担ってきた障害者の就労支援施設に影響が及んでいる。岩手県内では、自動車関連の業務を請け負っていた施設で売り上げが半減したところもあり、「障害者の工賃は安くなり、就労意欲も下がってしまう」と危機感が強い。一方で、景気に左右されない自立経営を模索する動きも広まっている。

 トヨタ系の完成車組立工場がある岩手県金ケ崎町。30人の身体障害者らが働く就労継続支援事業所「共伸園」の青木俊悦園長(60)は「ここまで仕事が減るとは思わなかった」と肩を落とした。
 施設の売り上げの約7割を、3年前から受注するトヨタ自動車のエンブレムなど塗装部品加工が占める。通所者は生産性を高めるトヨタ流「カイゼン」に取り組むまでになった。昨年まで90万円あった月の売り上げが、年明け以降は40万円以下に落ち込んだ。

 現在、通所者の仕事は施設のタイル張り替えが中心。青木園長は「納期を心配するほどの忙しさが一転、4月以降は仕事の当てもない。ここ3年間で8人が企業に就職したが、しばらくそれも期待できない」と訴える。
 急速に悪化した環境に、知的障害者ら36人が通う北上市の「北萩寮」の小菅公夫施設長(47)は、通所者の就労意欲への影響を心配する。

 施設は自動車部品を梱包(こんぽう)する段ボール組み立てを請け負っているが、受注額は昨年夏の3分の1まで激減した。蓄えを切り崩して、工賃月額約2万3000円は維持しているが、「知的障害者が仕事を学ぶ場が減ってしまい、働く意欲自体が失われることが怖い」(小菅施設長)という。
 岩手県が86の障害者就労支援事業所から回答を得たアンケートによると、1月の各事業所の平均売上高は昨年10月比で25%減、一人当たり平均工賃も9%減って1万5484円となった。

 農業生産が少ない時季であることも背景にあるが、障害者の自立を促そうと工賃倍増計画を掲げる県にとって「かなり心配な状況」(担当者)。2月から県庁各部局で施設への発注を増やしたり、製品を購入したりする支援を始めた。
 不況を自力で乗り切ろうとする動きも出ている。北萩寮は地場産大豆を使った「手作り納豆」の生産販売で、1月から近所に売り歩く「宅配事業」を始めた。玄関にクーラーボックスを置いて定期的に届けており、既に販路として約20戸を開拓するなど好評という。

 県の調査では、県内施設の約3割が食品加工の自社生産を増やすなど作業品目の見直しを進めている。県は「こういう時こそ経営体質を改善するチャンスととらえてほしい」(障がい保健福祉課)と話している。

新教育の森:神奈川 30年ぶりトイレ掃除復活--10年度から横浜市 /神奈川

3月13日13時1分配信 毎日新聞

 ◇「公共心」育成できる?
 ◇全市立小・中・高500校/「普通に戻った」の声も
 横浜市の全市立の小・中・高校約500校(特別支援学校を除く)で10年度から、児童・生徒のトイレ掃除が復活する。約30年ぶりだけに感染症への不安も聞かれ、「社会をよくしようとする公共心の育成」を掲げる市教育委員会は対策に躍起だ。他の政令指定都市では実は当然の「子どものトイレ清掃」。トイレを磨けば心も磨かれる?【野口由紀】
 ■「すっきり」
 「キン、コン、カーンコーン」
 給食時間の終わりを告げるチャイムが鳴ると、ほうきやちりとり、背丈ほどある柄付きブラシを、子どもたちが一斉に手にする。タイル張りの床を丁寧にはき上げ、便器だってブラシでシャコシャコ。鏡もぞうきんでピカピカに磨いた。1月からトイレ掃除をするモデル校の市立折本小学校(都筑区)。3年の武田理奈さん(9)は「汚いって思わない。慣れてきちゃった」。別のトイレを担当した5年の内藤龍海君(11)らも「最初はやり方が分からなかったけど、すっきりする」と笑った。
 ■器物損壊4ケタに
 こうした風景はかつては他校でも見られたが、市教委児童・生徒指導課によると、昭和40年代ごろから子どもの姿が次第に消えた。今はどこも85年の通知でトイレ掃除が「業務」とされた学校用務員が清掃しており、例外的な市立中3校でも生徒は便器に触れず床をはくだけだ。
 市内の学校ではトイレなど施設の器物損壊事件が増え、07年度は1028件と初めて4ケタの大台に。一方、他の政令市では「小中高問わず掃除をさせていないお仲間は見つからなかった」と斎藤宗明課長。物を大切にする意識が薄れたのが理由と考え、トイレ掃除復活を打ち出した。
 ■感染症予防対策
 ところが学校現場から、ノロウイルスなどの感染症が不安だという声が上がった。市教委はマスクと手袋の義務化を検討したが、昨年10~11月に視察した相模原、南足柄両市から「大げさな」と苦笑された。南足柄市の子どもたちは素手でたわしを持ち便器を洗うが、感染症にかかったという報告はない。
 結局「場所を問わずリスクはある」として義務化を見送り、手洗いとうがいを徹底することにした。ただ教員ら大人が事前に見回り、嘔吐(おうと)物や下痢便などがある場合は掃除させないことにした。
 ■汚さなくなった
 モデル校の折本小は「復活」前の昨年12月、保護者へのプリント配布やPTA説明会など慎重に理解を求めた。反対の保護者はいなかったが、衛生面の心配から手袋を使うか議論になった。費用がかかるが効果は不明確なので、手袋は使わず手洗いの徹底で落ち着いた。まだ体力が弱い1・2年生は除外した。
 一人で掃除していた用務員の磯部久さん(51)は校舎内14カ所のトイレを一巡するのに1週間かかったという。児童が毎日掃除するようになり「鏡にしぶきが飛んでいたが、目に見えてきれいになった」と高く評価する。
 では肝心の「公共心の育成」効果は--?
 一足早い「復活」を、上妻優美子校長(54)は「言うならば普通に戻った」と冷静に語る。トイレだから公共心が育つというわけではないが、トイレだけ掃除しないのもおかしい、という理由だ。「まだ効果は分からないが、児童がトイレを汚さなくなったという声もある。長期間続ければ成果が出てくるのでは」と期待する。

仙台駅と青葉通連結 エスカレーター南側が18日開通

3月11日6時13分配信 河北新報

 仙台市は、JR仙台駅前のペデストリアンデッキと青葉通の南側歩道をつなぐエスカレーターの供用を、18日午後2時から開始する。北側エスカレーターは、2月末に供用を始めている。

 仙台市は開通後、エスカレーター脇の階段のタイル張り替えなど修復に着手する。北側階段では先行して工事を行っている。両階段とも5月の大型連休前の完成を予定する。

 エスカレーターの設置は市のバリアフリー対策の一環。

九産大:ユニーク卒研 1K「クール」に改装、賃貸に--建築学科・古川さん /福岡

3月9日12時4分配信 毎日新聞

 九州産業大学の学生が卒業研究で、実際の部屋のリフォームを手掛け、賃貸物件として貸し出される。また志賀島(東区)にアジアへ向けたゲートタワーを造る構想をまとめた学生も。それぞれユニークな研究として学内で注目された。【幸島朋子】
 教師志望だった工学部建築学科4年、古川信一さん(22)=東区=は、リフォーム授業に関する卒業論文執筆のため、1年生10人と大学近くにある築約30年の賃貸ビル(東区香住ケ丘2)の1室のリフォーム実習に取り組んだ。
 ビルの空き部屋8室の改装を低予算で請け負っていた、建築士の宮城雅子さん(39)と知り合ったのがきっかけ。学内の部屋の改装許可が出ず、困っていた時に見つかった“物件”だった。
 リフォームした部屋(6畳1K)の概念は、男子学生3人が同時に提案した簡素でかつおしゃれな感じの「クールな1K」。畳からこげ茶色のフローリング、部屋の壁・天井は白く再塗装、浴室には白とグレーのタイルを市松模様に張り、浴槽は撤去してシャワーとトイレのみにするなどが採用され、塗装やタイル張りは学生が主にした。
 「リフォームに興味を持ったのは、困っているマイナスの状態からプラスに転じる行為だから。実習があったことで、学生のやる気も上がった。機会をくれたビルのオーナーのためにも、今月半ば予定の改装完了まで協力したい」と古川さん。
 実習と、平面図のトレース、予算内でデザインするプランニング授業などの座学も含めて「初学者を対象としたリフォームの授業計画とその評価」としてまとめた。
 部屋の賃貸料は月額2万6000円(共益費別)。部屋のイメージはhttp://www.gyouretsu‐sumika.comで確認できる。問い合わせはエスト092・724・8338。
 ◇志賀島にタワー--デザイン学科・大江さん
 芸術学部デザイン学科4年の大江康文さん(23)=東区=は、志賀島に“鳥居型”の「アジア・グローバル・タワー」を設置する計画をテーマにした。
 金印が出土するなど歴史的に重要で、都市と自然が調和する風景が望める志賀島を「日本四景」にと提唱する指導教官、網本義弘教授(64)の考えから発想、タワーは高さ130メートル、現在、展望台がある場所を想定した。眺望スロープやプラネタリウム、漂流物博物館、国際会議場も加え、アジアへの文化発信センターと位置づけた。
 「日本のシンボル、鳥居をモチーフに、アジアへのゲート(門)を意識してデザインした」と大江さん。タワー完成時に望める風景の撮影に協力した福岡観光コンベンションビューローの林田範雄専務理事は「福岡の入り口に、こんなランドマークがあったら面白い。観光誘致という点でも、若い人たちのユニークな発想に期待したい」と話していた。
〔福岡都市圏版〕

東京中央郵便局 解体一時延期 駅前不動産ビジネスに暗雲

3月7日8時33分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

 日本郵政は6日、東京中央郵便局の取り壊しを鳩山邦夫総務相が批判している問題で、この日から予定していた現局舎の本格的な解体工事を一時延期した。当面は外壁タイルや石材の撤去に伴う建物の崩落を防止するなどの保全工事を進める。同社は「総務相の批判に配慮したが、理解を得てできるだけ早期に(解体を)始めたい」としている。

 延期に伴い、新ビルの2011年度内の完成に遅れの懸念があるほか、負担増の恐れも出てきた。駅前の一等地での不動産ビジネスの先行きに暗雲が広がっている。

 計画の抜本的な見直しで現契約を破棄することになれば、建設業者から数十億円規模の賠償を求められる可能性があり、再設計や工期の遅れに伴う追加費用ものしかかる。さらに「完成が遅れればテナント収入など月に約10億円の損失が出る計算になる」(日本郵政不動産企画部)という。

 07年10月の郵政民営化に伴い、旧日本郵政公社から東京と大阪の中央郵便局、名古屋中央郵便局駅前分室を引き継いだ郵政グループ傘下の郵便局会社にとって、3大都市の駅前一等地の不動産事業は「将来の収益の柱」と期待するビジネスだ。

 山間・離島までのカバーを義務付けられた、郵便局の全国網の維持費用を稼ぐためにも、不動産ビジネス展開は不可欠になる。

 東京中央郵便局のケースでは、建物の一部を保存・再現しながら、高さ200メートルの「JPタワー」(仮称)に建て替える計画を策定。JR東京駅前という立地を生かし、テナント収入などで年間百数十億円の利益を見込む。

 日本郵政幹部は東京中央郵便局の再開発について「過去2年間、総務省や文化庁と相談を重ね、効率性と公共性の両立を目指した結果が今回の計画だ」と述べ、総務相の理解を得ていく意向だ。

COCON烏丸でタップダンスのワークショップ-京都カラスマ大学が公開授業

3月7日15時34分配信 烏丸経済新聞

 京都カラスマ大学は3月7日、COCON烏丸(京都市下京区烏丸通四条下ル)1階アトリウムで公開ワークショップ「KAZ TAP公開ワークショップ~足でリズムを鳴らしてみよう」を開催した。

 講師は熊谷和徳さん。1977年仙台市の生まれ、5歳でタップダンスを始め19歳で渡米。NYと東京を拠点に活動している。今回の授業はライターの高橋マキさんが企画。「建築家・隈研吾さんが意思をもって残された古い寄木細工のタイルでリズムが刻まれ、吹き抜けの高い天井の下で歓声が上がる―そんな週末の午後を想像しただけでワクワクした」と高橋さん。

 高橋さんは、授業形態を「公開」とした理由を、「京都カラスマ大学の取り組みをできるだけたくさんの人に知ってもらいたいという思いもあるが、生徒さん以外の『京都の街の誰か』とも新しい発見や出会い、学びの喜びを共有できれば」と話す。

 定員は20人だったが早々に満員に。女性受講者が多く、当日は熊谷さんのデモンストレーション、基本のステップ、短い振り付けのレッスンやグループ発表を行った。飛び入りで参加した子どもの姿や、パブリックスペースのためCOCON烏丸への一般来館者も立ち止まってワークショップを見る姿も。

 「身体が楽器になって、しかも世界中のことばが通じない人とでも、子どもでもおじいちゃんでも、誰とでもコミュニケートができる」と高橋さん。

 3月28日には松尾大社拝殿(西京区)で「熊谷和徳×松井美路子“タップ×オペラ!”スーパープレミアムライブ」を開催する。

『ドンキーコングJR.』のシャワールーム-ドット絵をタイルで再現

3月3日20時26分配信 インサイド

コロンビアに住むアーティストのAndres Barragan氏とMiss Vynilos氏は『ドンキーコングJR.』をテーマとしたシャワールームを作りました。

タイルの配置は実際のゲームのドット絵を拡大することで決定されているとのこと。タイルで描かれたキャラクターはかなりオリジナルに近い見た目となっており、ドット絵とタイルの親和性の高さがわかります。シャワールームの壁一面にタイルを一つ一つ配置する訳ですから、その手間たるや相当なものと思われます。手間も根気も技術も必要な匠の技といえるでしょう。

新しい音楽体験を具現化したい――「Walkman Phone, Premier3」が“3”である理由

3月3日12時13分配信 +D Mobile

開発陣に聞く「Walkman Phone, Premier3」:“Walkman Phone”シリーズの第2弾として登場したソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「Walkman Phone, Premier3(プレミアキューブ、以下Premier3)」は、「ミュージックスタイル」「シアタースタイル」「ケータイスタイル」という3つのスタイルにより、音楽や映像サービスの“聴く/観る/拡がる”を満喫できる。

 一足先に発売された「Walkman Phone, Xmini」は、“ウォークマンありき”というコンセプトのもと、音楽機能に絞ったモデル。一方、Premier3は音楽機能はもちろん、ワンセグやEZ・FM、おサイフケータイ、GPS、Bluetooth、FMトランスミッター、グローバルパスポートCDMA、319万画素カメラなど、トレンド機能やauの新サービスにももれなく対応する。

 Premier3はどのようなコンセプトのもと、どんなターゲット層を想定して開発されたのか。ソニー・エリクソンの開発陣に聞いた。

●Xmini、そして本家ウォークマンとの差別化

 ソニー・エリクソンはPremier3やXmini以前も、「ウォークマンケータイ W42S」「ウォークマンケータイ W52S」といった“ウォークマン”の冠を付けたケータイを開発してきた経緯がある。

 「ソニー・エリクソンは音楽については認知度のあるメーカーだと自負しています。それに加え、KDDIさんは着うたの文化を立ち上げたので、KDDIさんとソニー・エリクソンでがっぷり四つに組むことで、新しい音楽のユーザー体験を具現化するモデルを作りたいという話をしてきました」と商品企画担当の宮澤氏は話す。その1つとして開発されたのがXminiだ。

 Xminiはケータイではなく“ウォークマンとして使えること”を前提として開発されたが、Premier3は逆のアプローチを採り、「ケータイで音楽を楽しむにはどうすべきか」を改めて深く考えたという。その答は「Premier3」という製品名に集約された。

 Premier3の「3(キューブ)」は3乗を意味し、3つのスタイルで音楽や映像サービスを楽しむというコンセプトが込められている。当初は「トライフォルムウォークマン」という名称にする案もあったという。

 「閉じた状態では音楽プレーヤーとしてすべての音楽操作ができ、横に開くと音楽や映像を観て楽しめます。縦に開くと、(専用の)音楽プレーヤーにはないケータイならではの音楽体験を得られます。つまりその場で着うたフルや着うたフルプラスなどの音楽コンテンツをダウンロードできるわけです。これは本家ウォークマンとの大きな差別化になると考えています」(宮澤氏)

 また、W52Sの反省も踏まえ、本体のスピーカーはモノラルを採用し、小型化を優先した。そして「スピーカーを使うのは自宅が多い」(宮澤氏)との考えから、付属の卓上ホルダにステレオスピーカーを搭載した。このほか、2GバイトのmicroSDやリモコンも付属し、BluetoothやFMトランスミッターにも対応する。

 「音楽を聴くのは家と外出先、車の中が多い。Premier3なら、この3カ所で音楽を十分楽しめます。付属品を充実させたのも、Premier3でもれなく音楽生活を楽しんでほしいと考えたからです」(宮澤氏)

 「Premier」には「デザインの上質感」と「機能の充実」という2つの意味がある。

 「Premier3は“ケータイありきのWalkman Phone”なので、ケータイとして高級感のある上質なデザインを目指しました。また、今までケータイでは音楽を聴かなかった人にも音楽を楽しんでほしいという想いがあったので、いかにもミュージックプレーヤーというデザインではなく、ぱっと見て『すごくかっこいい』と思ってもらい、そこから音楽に入ってもらうようアプローチしました。機能も、足りないものはほとんどないと言えるくらい充実させました」(宮澤氏)

 製品名をこれまでの「ウォークマンケータイ」から「Walkman Phone」に変えたのは、「高級感のあるデザイン+音楽に特化するため」だという。「W42SとW52Sも音楽機能を訴求しましたが、Walkman Phoneではさらに音楽に特化し、ケータイとしても昇華させたかったから」と宮澤氏は説明する。

 また、W42SやW52S、そしてXminiと、これまでのウォークマン系の機種はすべてスライドボディを採用したが、Premier3では「デュアルオープンスタイルの方が今回のコンセプトにふさわしい」(宮澤氏)との考えから、スタイルを変更した。海外向けのウォークマンケータイも含め、ウォークマン系の携帯でデュアルオープンスタイルを採用するのはPremier3が初となる。

●「のり」ではなく「かんぴょう」!?――小型化したヒンジ

 Premier3が採用した、ディスプレイが横にも開くシアタースタイルは、2006年に発売された「W44S」を継承したものだ。W44Sは大きく突起したヒンジのインパクトが強烈だったが、Premier3ではヒンジの出っ張りはほとんどなくなり、すっきりした印象になった。機構設計担当の青野氏は、「Premier3のヒンジはぱっと見てもW44Sとは相当違いますが、この形に至るまでには相当苦労しました」と話す。

 「W44Sではキー側とディスプレイ側をフレキシブルケーブルでつないでおり、フレキシブルケーブルがヒンジの軸に巻き付く形になります。するとその分だけ軸の直径が増すので、ヒンジ部分が太くなってしまいました。そこでPremier3は、ヒンジの軸の中心に穴を空けて、細線同軸ケーブルを通す仕様にしました」(青野氏)

 「のり巻きののり(巻き付いたフレキシブルケーブル)だと太くなるので、かんぴょう(細線同軸ケーブル)を通したと考えると分かりやすいですね(笑)」とデザイナーの鈴木氏は説明する。

 「そのほかに、バネの構造を変えることでヒンジ機構自体も小型化しました。ただ、本体内部にヒンジを潜り込ませたので、本体の実装面積と部品を置くスペースが削られます。ここは基板サイズをうまく調整してなんとか収めました」(青野氏)

 大幅な小型化に成功したヒンジだが、右側面はわずかに突起している。この出っ張りを完全になくすのは、やはり難しいのだろうか。「ヒンジ自体をものすごく細くすれば可能だとは思います」と青野氏は言うが、見た目を優先してあえてこの形にしたという。

 「W44Sのヒンジを見て『何これ、ケータイ?』という(いい意味での)声もあったと思います。そこはデザイン上のアクセントとして残しました」(鈴木氏)

 Premier3の形状には、同じく横開きスタイルを採用するドコモの「P-01A」やauの「H001」にはない特徴がある。それは、ダイヤルキーの先端に“逃げ”のスペースを作ったことだ。

 「他社さんの(横開き対応)モデルは先端部に(縦開き用ヒンジの)壁がありますが、W44Sと同じくPremier3にはディスプレイ側に縦開き用のヒンジがあるため、この壁がありません。横に開いた状態でキー操作をするときの握りやすさを考えると、ここに逃げのスペースがある方がいいと思います」(鈴木氏)

●ボディ全体の薄型化と配色にも注力

 ヒンジだけでなく、どのスタイルでもデザイン的に違和感がなく、持ちやすくなるよう、ボディ全体の小型化にも注力した。「幅、高さ、厚さの3寸法を小さくしたのに加えて角を落とし、より小さく薄く見えて手にしっかりなじむ形を目指しました」と青野氏。しかし、角を削いだ分だけ部品の実装体積が減るので、その中で部品を収めるのは難しくなる。

 「バッテリーと基板を並列に置くか、重ねるか、それとも厚くて小さいバッテリーにするか、薄くて大きいバッテリーにするか……など、部品の構成は何パターンも考えました。製品版では、キーに近い部分にメイン基板があり、その上に主な部品を載せています。コネクタ類など長いものも、キーに近いところにまとめました。もう少し薄くできるパターンもありましたが、全体的なサイズのバランスを考え、ベストな構造を選びました」(青野氏)

 バッテリーがスペースの多くを占めるボディの裏側は、バッテリーカバーが斜めにスライドするようカットした。そして「斜めにカットすることででき上がった内部の空間に(通信用の)サブアンテナを搭載した」(青野氏)という。

 ワンセグのアンテナを完全内蔵タイプにしたことも、ボディの小型化と薄型化に貢献した。プロジェクトマネージャーの田上氏は「ワンセグの特性を考えるとロッドアンテナの方が有利ですが、薄型化を実現するために、ハードルの高い内蔵アンテナにトライしました。もちろん、ロッドアンテナと同等の感度を実現しています」と説明する。

 細かいところでは、microSDスロットがサイドキーの間にあるのが珍しい。サイドキーは再生、音量調節、早送り/巻き戻しの5つは必要だったため、最も自然な「音量調節、早送り/巻き戻し」と「再生キー」の間に配置した。スロットのカバーは、ほとんどの機種が採用する縦に開くタイプではなく、360度回転するタイプが使われている。

 「通常の(縦に開くタイプの)タイプだと(スロットカバーの)接続部が長く、すぐ近くにバッテリーがあるため、これ以上伸ばせませんでした。ACアダプタのカバーが回転式だと、充電中にプラプラして邪魔になりますが、microSDなら着脱するときだけなので、問題ないと思います」(青野氏)

 ボディカラーの配色にも注目したい。本体の表側と裏側のパーツごとに色を変えている機種はあるが、(パーツが表裏の2つのみなので)通常は2色しか使われない。しかしPremier3は表裏に左右を加えた4つのパーツで構成されており、パーツごとに計4色を使っている。

 「単に左右のパーツを重ねたただけでは本体が太くなってしまうので、4方向からパーツを組み合わせました。つまりパーツ同士が重なり合う部分がなく、どれか1パーツを取ると、解体されます」と鈴木氏。左右にさらに2色を加えたのは、「本体を閉じたときに帯がぐるっと1周したトラック形状を作りたかったから」だという。

●薄くて押しやすい「ブライトスクウェアキー」

 ダイヤルキーやソフトキーには、シート上に正方形のキーを配した「ブライトスクウェアキー」を採用した。

 薄型化に注力したケータイにはシートキーがよく使われるが、クリック感がなく操作性では劣る傾向がある。そこでPremier3では、シート上にさらに正方形のキーを乗せたキーを採用し、薄型化と操作性を両立させた。キー自体は小さいが、クリック感があり押しやすい。

 「このキーは、サイズや感触別にかなりの数を試作しました。キーはユーザーが一番触る部分なので、薄型化に注力しつつも優先的にスペースを使いました。最終的にはどのキーもクリック感があり押しやすくなりました」と鈴木氏は自信を見せる。

 さらに、「各キーの周囲に凹凸を付けてタイル状に区切り、通常のキーと同じ感覚で押せるよう配慮しました」と鈴木氏。ちなみに、タイル状のキー周辺部はダミーなので押しても反応はしない。

 本体を閉じた状態からワンタッチでLISMO Playerを起動できる背面のキーは、円形の下半分が窪む独特の形状を採用した。「キーが突起していると誤操作する恐れがあるので、極力フラットにしようと思いました。ただ、フラットすぎると押しにくくなるので、円の窪みの片側だけ押せるよう工夫しました」と鈴木氏は説明する。

●“広く横に”よりも“深く横に”

 “Walkman Phone”を満たす基準はやはり「音質」。「本家ウォークマンでも使うクリアオーディオテクノロジーがあるかどうか、これが一番重要です」と宮澤氏は述べる。

 「本家ウォークマンの基準をクリアしているか、社内で客観的なテストをもって検査します。最終的に、Premier3は本家と同等の高得点を獲得できました」(田上氏)

 ただし、ウォークマンが搭載するノイズキャンセル機能は、「ノイズを拾う回路を入れることでサイズが増してしまうので、技術的なことも含めてまだ達成できていません」と田上氏。ここは次期モデル以降の改善に期待したい。

 音質はもちろん、音楽プレーヤーの操作性にもこだわり、LISMO Playerを横向きの全画面で利用できるようになった。ソフトウェア担当の平澤氏は、「ただ横画面にするだけではつまらないので、前後の曲のジャケット写真を表示するようにしました」と話す。

 音楽再生画面のビジュアライザーも横画面に対応し、「ガイドを見なくても操作できるよう、視覚と操作感を合わせた画面作りにも注力しました」と平澤氏。待受画面の時計など、GUI(グラフィックユーザーインタフェース)はXminiと同じ部分が多いが、Xminiのように、本体色ごとに色が異なるFlashの待受画面は採用しない。

 横画面で操作ができるのは、シアタースタイルで利用できる「ワンセグ、LISMO Player、PCサイトビューアー、静止画撮影、フォトビューアー、音楽付きスライドショー、時計」が基本となる。横専用の待受画面はなく、横画面での文字入力もできない。

 「Premier3では音楽や映像など、コンセプトに特化した部分の開発に注力したので、“広く横に”というよりは、“深く横に”使ってもらうことを重視しました。横で文字を入力をするには、QWERTYキーボードが必要だと思います。それよりも、ビューアーとしての操作感を極めた方がいいのかなと」(宮澤氏)

 そんな宮澤氏が「隠れお勧め機能」だというのが、横画面でのカメラ操作だ。シアタースタイル時には左端に遊びの部分ができるので左手が固定しやすく、側面にシャッターキーがある。さらにレンズがボディ裏側の中心に近い所にあるので、指で隠れてしまうことも少ない。

 そのほか、ソフトウェアで進化したのが「フォトビューアー」だ。「Cyber-shotケータイ S001」と同じく、Premier3のフォトビューアーも、保存した日付順に写真を横1列で表示する「タイムライン表示」に対応する。各日にちの写真を選ぶと、その日の写真が縦に一覧表示するという仕組みだ。

 「S001のようにフォトビューアー専用のキーはありませんが、シアタースタイルならメニューの第1階層から呼び出せます。モーションセンサーはありませんが、横で撮影したものは横向きで記録されます」(平澤氏)

 よく連絡を取る人やよく使う機能をマップに表示する「MyOriginalMap」は、マップの拡大/縮小表示が可能になったほか、人物のアイコンから直接アドレス帳にアクセスして電話やメールを使えるようになった。ただしメールやLISMO Playerなどの機能アイコンから各機能に飛ぶことはできない。

 ケータイアレンジは5種類を内蔵するが、その中の「シンプル」では、メインメニューに本物のジャケット写真を使ったという。「CDのジャケット写真を1枚ずつ作って、それをケースに入れて写真を撮りました。待受画面では机の上にCDが何枚か並んでいるのですが、板の色や木目まで、かなり細かいところまで考えました」と平澤氏はこだわりを明かす。

●Walkman Phoneのこれから

 ソニー・エリクソンは、2008年のJ.D. パワー アジア・パシフィックが調査した携帯端末の顧客満足度調査(※)で1位を獲得した。この勢いを加速するように、2008年12月にXmini、2009年2月にPremier3を発売。そして3月にはS001の発売も控えており、端末需要が冷え込む中でも“攻め”の姿勢を崩さない。宮澤氏は顧客満足度1位を獲得できた最も大きな要因として「隅々まで気を遣って作っているから」と分析する。

※2007年8月~2008年7月に発売された携帯電話を購入したユーザー1819人を対象に実施したもの

 「ユーザーさんがソニー・エリクソンに期待するものは、ほかのメーカーとは違うところにあると考えます。携帯電話への期待+ソニー・エリクソンブランドへの期待にどう応えるか。この2つの軸がしっかりしていれば、我々にとってもユーザーにとってもいい商品になります」(宮澤氏)

 ソニー・エリクソンへの期待とは、「平たく言うと、一風変わったもの、尖ったもの、人とは違うもの」と宮澤氏。それらを具現化した製品の1つが“Walkman Phone”となる。Walkman Phoneの今後のシリーズ化にも期待したいところだ。

 「Cyber-shotやウォークマンなどのブランドに象徴されるAV機能は我々の強みです。最終的にはKDDIさんとの話し合いになりますが、我々のロードマップとしてはWalkman Phoneの継続は考えています」と宮澤氏。Xminiのような尖った製品か、それともPremier3のようなハイスペック路線か――Walkman Phoneのさらなる進化に注目したい。