戦前、「東洋一の百貨店建築」と称された高島屋東別館(大阪市浪速区)が5月29日、6月5、12日の3日間、計120人限定で特別公開される。地下鉄駅との接続を想定した「幻のアーケード」や、岡本太郎さん原画のタイル画など、普段は見られないバックヤードも見学できる。建築物の公開を通して地域を活性化する市民参加型イベント「オープン! アーキテクチャー」の一環で、大阪では初めての試みだ。
高島屋東別館は堺筋に面した日本橋の電器店街の一角にある。地上7階建て、地下2階。当初は松坂屋大阪店として、1928年(昭和3年)から37年(同12年)にかけて順次、完成した。66年の閉店後は、建物を買い取った高島屋が事務所中心で使用してきたため、外観、内部ともほぼ当時のまま保存されてきた。
建築はルネサンス様式で、外観はテラコッタ彫刻で飾られ、建物内は壁面や階段などにふんだんに大理石が使われている。
産業遺産に詳しい垣本徹・大阪教育大助教は「贅(ぜい)を尽くした戦前の豪華建築がそのまま残ったタイムカプセルのようだ」と評価する。
地下2階には、地下鉄堺筋線の駅建設を想定して、ホームと店舗を直結するアーケードが作られている。同線が開業した69年にはすでに松坂屋大阪店は閉店された後で、駅建設は幻に終わった。壁の向こうからは地下鉄電車のごう音が聞こえてくる。
屋上には、街を一望できるプールの跡が残っている。子どもたちの人気を集めたスポットで、冬季にはスケート場としても利用されていたという。高島屋大阪店の食堂を飾っていた巨大タイル画も移設、保存されている。原画は岡本太郎さんが描いた。
主催するオープンアーキテクチャー実行委員会の斉藤理さんは「大阪には個性的な建築物が多い。公開は地域の歴史、文化を読み解くことだ。都市観光の新しい資源の発掘につながってほしい」と話している。
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「オープン! アーキテクチャー」は2008年に東京で始まった。大阪では、大阪市立大大学院創造都市研究科OBらでつくる「大阪創造都市研究会」などが共催。高島屋東別館の特別公開は各日、午前10時半、午後1時半の2回で、定員各20人。入場料(資料代含む)は1000円。船場の綿業会館(5月28日)や、なんばターミナルビル(6月2、9日)も特別公開(有料)される。いずれも予約制。問い合わせはオープンアーキテクチャー実行委員会(03・3668・3666)、申し込みはウェブ(http://open‐a.org)まで。
(2010年5月25日 読売新聞)