火のない暖炉

家族や友人が集まってくつろぐリビングにあったらいいなと思うもの、それは暖炉。湿度が高くじめっと冷えるリマの冬も、暖炉があれば暖かく過ごせる。街の骨董(こっとう)品店に行けばおしゃれな火かき棒や暖炉専用の細いシャベルが売られており、道具自慢で会話が弾むことも。また赤々と燃える炎のそばで一人静かに読書をしていると、薪のパチパチと弾ける音に釣られ、一人、また一人と家族が集まってきて、楽しいだんらんが始まるのだ。

 一方、暖炉の設置はそう簡単なことではない。床や壁に耐熱性のタイルを張ったり、換気のため排気口や煙突を取り付けたりしなければならないのだ。一戸建てなら比較的設置も容易だろうが、アパート、特に中層階の場合は何かと制限もあって設置は難しいだろうと思っていた。

 そうした話を知人にしたところ、なんと簡易暖炉をプレゼントしてくれた。つぼのような形をしたシンプルな素焼きの暖炉だが、大きさも手ごろで小さな部屋でも圧迫感なく置ける。排気の問題を解決しなければならないが、いつかはぜひこの簡易暖炉に薪をくべ、暖かな空間にお客様をお招きしたいものだ。

 人々を魅了してやまない暖炉の最大の悩みといえば、掃除である。一戸建てに住むような家庭ならばメード任せで問題ないが、煙突掃除から灰の処理など、暖炉の掃除は想像以上に大変だ。また薪代もそう安くはなく、経済的な暖房器具とは言えない。友人カルメラの家にも暖炉があるが、「結局あんまり使ってないの」と自嘲(じちょう)気味。家族の写真や小物を置く、雰囲気のある飾り棚として使われている。

 それでもやはり、人々は暖炉のあるリビングに集まってくる。赤々と燃える炎だけでなく、懐かしい思い出の詰まった写真や大切な置物が、暖炉を囲む人々の心を暖かく包み込んでくれるのだから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA