ドラマ「不毛地帯」ロケ地のビル、来館者急増

小矢部市出身で伊藤忠商事元会長、瀬島龍三をモデルにしたテレビドラマ『不毛地帯』(フジ系、毎週木曜日)のロケ地となった富山市の「富山電気ビルデイング」が脚光を浴びている。

 これまで少なかった若者の来館者が増え、結婚披露宴会場としても注目されている。電気ビルは「これほどのPRになるとは」と思わぬ波及効果に驚いている。

 電気ビル本館はコンクリート製5階建て。1936年、日本海電気(現北陸電力)本社移転に際し、レストランやホテル、大ホールを備えた総合ビルとして建設された。45年の富山空襲で一部を焼失したが、修復され、富山県庁、旧大和富山店、富山大橋とともに、同市街地に残る数少ない戦前建築物の一つ。マストに見立てたライト塔や円窓など「船」をモチーフにしたデザインで、タイル張りの壁や細かい装飾が施されたしっくいの天井などが特徴だ。

 周辺に多数のホテルが開業した影響で74年にホテル営業は終了したが、現在も宴会部屋やレストラン、約375平方メートルの大ホールを備えている。

 ドラマは山崎豊子の同名の長編小説が原作で昨年10月にスタートした。主人公のモデルとされる瀬島は元陸軍参謀で、シベリア抑留から帰還して伊藤忠商事会長を務めた。

 昨年8、11月のロケをきっかけに一日約400~500件だったホームページ閲覧数は、現在約2万件に急増。観光目的の来館者も増え、「撮影に使われたのはどの部屋か?」などの問い合わせも寄せられている。

 ドラマを見た若年層の関心が高まったことで、2003年まで約20年間ゼロだった電気ビルでの披露宴が09年度には25件に。09年度の婚礼関連の売り上げは1月半ば時点で、既に前年度から35%も伸びている。

 電気ビルは、レトロな内外装や、そばを市電が走る立地条件が「時代設定にふさわしい」と評価され、全国200か所からロケ地に選ばれた。

 野上勝彦支配人は「ロケ地に選ばれたのは偶然で、縁を感じる。不況でビル全体の収入が減る中で、思わぬ救世主となってくれた。今後も大切に整備しながら、欧州の建造物のように200年、300年と残していきたい」と話した。

(2010年1月28日20時20分 読売新聞)

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