◇開放的な草原の湯
鶴の湯は、福岡の実家に住む父(70)が「一度入ってみたい」と言い続けてきた。泊まりがけで遊びに来たのに合わせ、筆者の長女日向子(5)も連れて3人で出かけた。
春の「火まつり」で知られる扇山(792メートル)の山すそにあるどこまでも開放的な温泉だ。長年通い続ける市内の男性ファン(65)がここを見つけたのは約30年前。山歩きの最中に道に迷い、谷川沿いに下る途中で偶然、見つけたという。横には大人が4~5人入れるほどの穴があり、さっそく入浴した。やや熱めだが、湯加減もいい。以来、毎月1~2回、夜道をかき分けて出かけた。
知人と共にスコップとツルハシで穴を掘って湯船を広げ、小さな脱衣所も建てた。さらに、別のグループが、湯船の底にタイルを張ったり、コンクリートのベンチを作ったりし、少しずつ快適な空間に変わっていった。
父は念願の入浴を果たし「気持ちいいねぇ」と大喜びだ。常連男性が温度計で測ると、湯温は45度。だが、肌ざわりが柔らかい硫黄系の湯だからか、湯温はもう少し低く感じる。日向子も「熱い」と言いながらも、しっかりと湯につかっている。肌が弱い長男裕紀(1)にも良さそうだ。そんな話をしたら、日向子にズバッと切り捨てられた。
「ゆう君はこんな熱い湯には入れんちゃ」【祝部幹雄】
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◇鶴の湯(鶴見)
鶴見霊園を登り切った草原に湧き出す究極の秘湯。ほのかな硫黄臭を持つ45度前後の湯が湧(わ)き出す。雨が少ない11月末~2月には熱くて入れなくなることもある。温泉道スタンプは、入浴風景を写真撮影し市観光協会0977・24・2828へ持参して押してもらう。入浴無料。