焦げ茶色のしゃれた外観、傑作公共建築 甲信越の百選 山梨県立美術館

5月18日7時56分配信 産経新聞

 ヘンリ・ムーア作「四つに分かれた横たわる人体」が適度な距離を保って配置された建物には、修学旅行生や観光客が続々と詰めかける。ここは、「種をまく人」などを収蔵し、“ミレーの美術館”として知られる山梨県立美術館だ。

 開館から30年が過ぎ、ミレー作品の展示室の色を、白から大地を思わせる赤褐色に変えるなど大幅に変更。今年1月にリニューアルオープンし、来館者数は前年の2倍のペースで推移している。

 ただ、美術館のアピールポイントはほかにもあった。焦げ茶色のしゃれた外観の建物は平成10年、建設省(現国土交通省)が全国から選んだ「公共建築百選」に、山梨県内から唯一、選定された。

 設計は、日本近代建築の先駆者とされる故前川国男氏(1905~1986年)が担当。30年という年月のため、建築の特長などはなかなか判明しなかったが、山梨県教委学術文化財課が1冊の本を探してくれた。この本「山梨県立美術館という建築」には、設計時にチーフとして当たった大字根弘司氏の一文があり、「前川国男の建築作法のうえで一つの転換点となった仕事」と書かれた。

 鉄筋コンクリート造りの外壁に縦にタイルを取り付ける、珍しい手法だったのだ。さらに周りを田んぼに囲まれた当時ののどかな環境の中、美術館らしい雰囲気作りが課題だったと記されていた。

 ミレー作品に加え、建物などの“鑑賞”も楽しめそうだ。(花岡文也)

 ■山梨県立美術館 昭和53年、甲府市貢川の農業試験場跡地に開館。山梨の風土に合うとして、穏やかな農村風景を描くミレーの作品を中心に収集する。当時の田辺国男知事(1913~2005年)が推進したが、「『貴族趣味』といった中傷がある中での決断」(県議)という。昭和60年度に常設展の年間入館者数が最高の約49万人を記録、“地方美術館の成功例”とされたが、平成19年度は約10万人に減少。ただ1月のリニューアルオープン後は入館者数が増加し、5月12日に5万人を超えた。同美術館(電)055・228・3322。

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