5月24日12時1分配信 毎日新聞
◇塩釜・玉川中の前校長が中心に 「学校の新しいシンボルに」
塩釜市立玉川中(同市権現堂)で、生徒らが集めた約3万個の使用済みアルミ缶を溶かして作った鋳物の「アルミ壁画」が2年越しで完成し、22日にお披露目式があった。制作の中心になったのは、前校長の高橋勉さん(60)=同市社会教育指導員、多賀城市在住。生徒も「学校の新しいシンボルができた」と喜んでいる。
壁画は縦1・5メートル、横2・9メートル。デザインは生徒から募り、3人の考案を生かしたもので、鳥かごからハトが巣立ち、手のひらに乗せた校章が描かれている。「START LINE」など生徒会のスローガンが刻まれ、生徒・職員ら712人が漢字1字で表した花びら形のメッセージも張り付けられた。
同中では毎年、文化祭で制作したタイル壁画を校門前の壁に飾ってきたが、ベニヤ板にタイルを張り付けた作品だったため、風雨で朽ちてしまい壊れやすかった。
高橋さんが「長く記念に残るものを」と考え、資源再利用の環境教育を兼ねてアルミ壁画制作を思いついた。高橋さんは、35歳で教職に就く前は、盛岡市の南部鉄器工房に勤めていた“変わり種”の校長。その経験を生かして校庭の一角に、手作りの炉や鋳型を備えた作業場を設けた。
高橋さんは、生徒らが家庭などから集めた3万1099個のアルミ缶を鋳造。壁画は35のパーツに分けて制作したため、鋳造は21回にも及んだ。生徒も「壁画制作委員会」を組織して、学校あげて制作に取り組んだ。高橋さんは3月末で定年退職。その後も学校に通い、先月末に壁画を完成させた。
22日のお披露目式で、生徒代表から感謝の花束を贈られた高橋さんは「退職しても、大好きだった学校に思い出の作品がある。私は幸せ者」とちょっぴり恥ずかしげな表情で語った。生徒会長の伏木卓也君(3年)は「壁画の質感がすばらしい。学校の新しいシンボルになると思う」と喜んでいた。【渡辺豊】