コウノトリ:鴻巣の空に 壮大な企画へ今月末から署名活動--観光協会 /埼玉

6月2日12時1分配信 毎日新聞

 ◇荒川沿いの5000平方メートルの雑木林、繁殖・自然放鳥めざす
 鴻巣の空にコウノトリを羽ばたかせようという壮大な計画に向け、鴻巣観光協会こうのとり部会のメンバーが今月末から署名運動を始める。国の特別天然記念物で71年に野生種が絶滅し、国内で人工飼育されているのはわずか190羽(08年現在)という希少種。環境省の許可が必要など、飼育経験のない鴻巣での実現の道のりは険しいが、まず市民の関心を高め地元自治体に働きかけるつもりだ。
 鴻巣市の鴻神社には、コウノトリが大蛇を退治したという伝説があり、地名の由来になったとも言われる。JR鴻巣駅に降り立つと、正面には巣で待つヒナにエサをやるコウノトリのモニュメントが出迎える。商店街の歩道にはコウノトリのタイルが張られ、商店にはコウノトリの名前を冠した菓子が並ぶ。市のキャラクターはコウノトリのひなをデザインした。
 これだけコウノトリをアピールする街だから、飼育しようと発想するのも当然の成り行き。市民グループ内で持ち上がり、部会の伊藤鋳義(かねよし)会長(70)らを中心に3年前から検討を進めてきた。当初はコウノトリの仲間でヨーロッパに生息するシュバシコウの輸入を計画したが、兵庫県豊岡市で自然繁殖が成果をあげていることから「本物を」と思い切った。
 部会の構想は、市内に自然に近い状態で飼育できる施設を設置。豊岡市に次いで多くの個体を人工飼育している東京・多摩動物公園から2~3のつがいを譲り受け、繁殖させ自然放鳥を目指す。施設は荒川沿いの5000平方メートルほどの雑木林が候補に挙がっており、敷地内にビオトープを作りエサ場にする。遠くまで飛べないよう少し羽を切り、周囲を低いフェンスで囲う。
 伊藤会長は「これだけ市民に親しまれている鳥。鴻巣の空を飛ぶのはごく自然だ。生息できるよう自然環境を改善する活動にもなる」と話す。署名が集まれば、市や県に市民の要望として提出し、取り組みへの協力を求める方針だ。鴻巣にコウノトリが生息した証拠となる写真や絵、文書なども探すという。
 環境省野生生物課は「保護増殖の目的で専門家による長期的な自然繁殖計画があり、地域のコンセンサスを得て公共団体が取り組むのであれば、施設での飼育が許可される可能性もある」と話している。【金沢衛】

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