X JAPAN ハリウッド殴り込み 世界初!映画の聖地でPV撮影

【ロサンゼルス=江川悠】人気ロックバンド「X JAPAN」が9日(日本時間10日)、ハリウッド中心地の複合商業施設「ハリウッド&ハイランド」の屋外特設ステージで、新曲「Jade」(発売未定)など4曲のプロモーションビデオ(PV)の公開撮影を行った。映画の祭典「アカデミー賞」の授賞式で知られるコダック・シアターも入る同施設内でアーティストがパフォーマンスを行うのは世界初。6日にロサンゼルス市内のスタジオでスタートした撮影は、14日まで同市内数カ所で総制作費5億円をかけて行われる。

◆制作費5億円をかけLA縦断
 映画の街に、ロックバンドとして“殴り込み”をかけるのが、いかにもXらしい発想だった。映画スターのサインなどが刻まれたブロックタイルで有名なチャイニーズ・シアターなどが並ぶハリウッド大通り。その中心地にある巨大施設の4階部分(高さ20メートル)に幅10メートル、奥行き10メートルの野外ステージが特設された。

 Xは1992年、海外進出を目標に「X JAPAN」に改名。97年に一度解散したが、07年に再結成し、アジア各地で念願の海外公演も実現させた。だが、08年に予定されていたニューヨーク公演が現在も無期限延期となっており、米国でメンバーがそろってファンの前で曲を披露するのは初めてだ。

 この日は、昨年5月にギタリストのSUGIZOが加入後初の新曲「Jade」のほか、海外ファンに向けて「I.V.」「ENDLESS RAIN」「Rusty Nail」のPV新バージョンの一部となるライブ風景を収録。98年に死去したギタリストHIDEさんの愛用ギターもステージに添えられた。

 ステージは底が透明になっており、その一部は約10メートルにわたって大通り上空に張り出している。片側2車線の道路をそれぞれ1車線ずつ規制し、撮影用の大型クレーンやレーザー光線を上空に照射するマシンを設置。上空で旋回するヘリもステージにライトを照射するなど、映画にも劣らない圧巻の演出だった。

 ドラムのYOSHIKIは昨年7月に持病の首ヘルニアを悪化させ、手術した。今も安静が必要だが、黒く塗ったコルセットを首に巻き、ドラムプレーを“強行突破”。また、ボーカルTOSHIも昨年秋に肋間(ろっかん)神経痛を患い、声が出にくい症状を訴えていたが、この日は伸びのある歌声を夜空に響かせた。

 地上1階の大型モニターにはステージの映像が映し出され、米国内や日本から駆けつけたファンがペンライトで「X」の文字を作りながら歓声を上げたり、楽曲の大合唱でメンバーを激励。午後4時から9時半の撮影中に、約8000人が会場に足を運んだ。

◆いろいろあった
 自ら総合プロデューサーとなってPV構想に着手したYOSHIKIは10日(日本時間11日)、ロサンゼルス市内の自宅で日本メディアの合同インタビューに応じ、前日の撮影について振り返った。

 「(ロサンゼルスの)ダウンタウンを見ながら『ENDLESS RAIN』を演奏したらジーンときて、涙が出てきちゃった。夢は追っていけばかなうものだと思いました」

 小学生の時、同級生のTOSHIとともにバンドを結成し、千葉県館山市民センターで初めてライブを開いてから約30年。ついにハリウッドのど真ん中に立った。

 「あそこまで行くまで大変だった。TOSHIとの関係とか、HIDEとの関係とか…。いろいろあったから感極まりますよね」

 こう話すと、YOSHIKIはサングラスの奥からこぼれ出る涙をぬぐった。HIDEの死、TOSHIとの確執、そして解散…。破滅へ向かっていたバンドが息を吹き返し、大きな目標だった全米進出を実現させた喜びはひとしおだった。

 今後は、延期となっているアメリカ、フランス公演の実現に向けて努力するとともに、アルバム制作のため、新曲のレコーディングに入るという。さらに、YOSHIKIは8月6-8日に米シカゴのグラントパークで開催される野外ロックフェスティバル「ロラパルーザ」への出演依頼が来ていることも明かした。

 「ロシアやドイツからも写真入りアルバムを送ってきたりして、(ファンが)世界中に広まっている。夢みたいですよ。ガラスのように飛び散ってしまう瞬間の美学じゃなくて、続ける美学もあるのかな」

 体はボロボロになっても、世界中にファンがいる限り、YOSHIKIは夢を追い続ける。

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