思い出残そう タイルアート 今春閉校の久井高3年制作

生徒数の減少から3月末で閉校となる三原市久井町の県立久井高校(境垣内(さかいがいち)隆雄校長)で、最後の3年生全20人が、「学校生活の思い出を形に残そう」と、タイルアート作品「キズナ~校章~」(90センチ四方)の制作に取り組んでいる。生徒らは、3年間の母校での日々を胸に刻みながら仕上げの作業を進めている。作品は3月6日の卒業式と閉校式で披露される。

 卒業生らは、2年生の美術の授業で作った、約1万本のマッチ棒を17人で張り合わせ、色と凹凸だけで校舎を表現した作品「ありがとう学び舎(や)」が、県美展で入選したことが大きな自信となったことから、「全員で作品を作り、学校への感謝の気持ちを伝えよう」と共同制作を決めた。

 10月に作業を開始。作品が大きいため、縦18センチ、横22・5センチの石版20枚に分割して進め、最後に石版をつないで完成させる。生徒らは白、赤、緑のタイルを細かく砕き、石こうなどで固めて張り付けている。2年生の時に美術教師として県美展の出品作品を指導した、県立世羅高校非常勤講師の高橋里子さん(37)(世羅町)も応援に駆けつけ、生徒と一緒に放課後も作業を続けている。

 姉(20)も同高の卒業生という西迫奈津希さん(18)は「入学時にはあまり思い入れが強くなかった校章ですが、みんなで作っていると、県美展で入賞したことや文化祭で歌った思い出など色々なことがよみがえってきます」としみじみと語る。最後の野球部員として、07年夏の県大会に出場した湯村貴洸さん(17)も「先生や先輩、地域の人にお世話になった気持ちを作品を通して表したい」と意気込んでいる。

 同高によると、作品は卒業式と閉校式で披露された後、市に寄贈する案も出ている。閉校式では、記念碑の除幕式や地域住民による民謡なども予定されている。

■メモ

県立久井高校 1933年(昭和8年)に私立の公民中学として創設。組合立久羽坂青年学校を経て、48年に県御調農業高校久羽坂分校に。78年4月の本校移管で現在の名称となった。志願者数減少を受け、2007年7月に募集停止が決定。卒業生は記録が残る1948年以降だけで2218人に上る。

(2010年1月22日 読売新聞)

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