◆J1第11節 仙台1―2名古屋(9日・ユアテックスタジアム)名古屋はアウェーで仙台と対戦した。1―1で迎えた後半44分、日本代表DF田中マルクス闘莉王(29)が約30メートルのピンポイントクロスで決勝弾をアシストし、2―1の勝利に貢献した。またF東京はアウェーで山形に3―0で快勝。FW平山相太(24)、MF石川直宏(28)らW杯メンバー入りの当落線上の選手が活躍し、10日の南アフリカW杯メンバー発表へ最後のアピールを見せた。
この男、底が知れない。岡田ジャパンの最終ラインを引き締める闘莉王がW杯メンバー発表前日に見せたのは俊輔ばりのアシストだった。
1―1で迎えた後半44分、ストイコビッチ監督から攻撃参加を許された闘莉王はオーストラリア代表FWケネディとアイコンタクト。右足で30メートルのピンポイントクロスを放った。あまりの絶好球にヘディング前からにやついたというケネディが頭で決勝弾。敵地ユアスタの1万7239人の観衆も衝撃の結末にぼう然自失。「切り札として前に出した。美しいクロス」。指揮官も思わずうっとりとした妙技だ。
「ジョーカーみたいなイメージ。あのままDFラインに残っていても負けていた」
今季名古屋へ移籍後の初アシスト。万能の切り札を自認する闘莉王はパサーとしてのセンスも非凡だ。渋谷幕張高に留学以前のブラジル時代は守備力ゼロの超攻撃的司令塔を務めた。絶大な空中戦の強さ、正確なフィード、そして、絶大な決定力に正確無比なクロスを手に入れた大黒柱はもはや死角なしだ。
「彼はヴァーサタイル(万能)な選手。僕と前線でコンビを組めればいいのにね」と今季7ゴールでJ得点王となったケネディは語る。FW転向で、アジア最強2トップの結成を求めるほどの闘莉王の万能性は、南アでも最終ライン、中盤、最前線と多彩な活用法を秘める。「守り倒したね」。仙台の猛攻を1失点でしのぎ切った堅守を視察した代表スタッフは舌を巻いた。大会前ですでに失速気味の岡田ジャパンを前進させるのはもう闘莉王以外にいない。