さぁ行こう!とちぎの“B級”スポット<5>栃木・『玉川の湯』 金魚を眺めひとっ風呂

 番台を通れば、そこは庶民の社交場。栃木市室町の「玉川の湯」は昔ながらの雰囲気を残すまき炊きの銭湯で、通称「金魚湯」。その名の由来は浴室に入るとすぐ分かる。

 浴槽の湯気の向こうに、水中をイメージした絵が描かれたタイルの壁が現れる。驚かされるのは壁の中央に埋め込まれた大きな水槽。何と、本物の金魚がスイスイと泳ぐ姿が湯船につかって眺められるのだ。

 店主の内木(ないき)晴樹さん(32)によると、同湯は一八八九年創業の老舗。一九五三年に改築した際、先代店主で内木さんの妻理恵子さん(35)の祖父原(はら)さん(故人)が「動かない絵を飾るより、見ていて面白いだろう」と浴室内で金魚を飼うことにしたという。

 金魚は男女各湯で約百匹ずつ飼育。二年ほど前に初めて水を抜いて掃除をした際、「寂しいって声が多くて驚いた」(内木さん)といい、なくてはならない存在になっている。

 金魚以上に客の心をつかんでいるのが、“陰の主役”とも言える二階の休憩所だ。銭湯部分の三倍はある約三百平方メートルの大宴会場にステージが設けられ、連日、カラオケや踊りで盛り上がる。

 「チャンチキおけさ」を気持ちよさそうに歌って踊った同市の清水昭夫さん(70)は「風呂にカラオケ、みんなと話せて、ここは三拍子そろっている」と絶賛。理恵子さんが近くで営む焼きそば店から出前も取れる。

 設備が老朽化し、経営は決して楽ではない。それでも、原さんの長女で理恵子さんの母克江さん(59)は「お客さんの憩いの場として続けていきたい」と柔和な笑顔を浮かべる。

 家族が守る懐かしの銭湯。心身を温かく癒やしてくれる。

  (清水祐樹)

 <メモ> 営業時間は銭湯が午前9時~午後11時、休憩所が午前9時~午後5時。料金は大人300円、11~6歳130円、6歳未満70円。休憩所のみの利用も可。水曜定休。栃木駅から徒歩10分のみつわ通り沿い。問い合わせは=電0282(22)1865=へ。

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