銀河鉄道「白鳥の停車場」

宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」に登場する「白鳥の停車場」が、賢治の故郷・花巻市のイギリス海岸近くにお目見えした=写真=。主人公ジョバンニになった気分で、停車場からイギリス海岸まで散歩してみてはいかが――。

 「白鳥の停車場」は作中、銀河鉄道に乗ったジョバンニがカムパネルラと一緒に途中下車し、白い岩が広がる「プリオシン海岸」で120万年前のクルミを拾い、地層の調査をする大学士と会話を交わす。プリオシン海岸は、イギリス海岸がモデルになっている。

 完成した停車場は、イギリス海岸のバス停の待合所で、間口約3メートル、奥行き約1・5メートル。下見板張りで、木のベンチが1個置かれている。物語に合わせて壁の時計は11時ちょうどを示し、「二十分停車」や、「銀河ステーション」から「サザンクロス」までの路線案内図が壁に張られている。足元は、銀河をイメージした石の中に、ハクチョウ座をモザイクタイルで埋め込むなど細かいこだわりも。

 花巻では昨年から、賢治作品の舞台やイメージのもとになった場所を掘り起こして市街地活性化につなげようと、住民らによる「賢治・星めぐりの街活性化協議会」が活動している。停車場は、会長で建築士の木村清且さん(59)が、通り沿いの所有地を利用して自分で設計し、私費を投じて作った。

 木村さんは「中心市街地には、ジョバンニがアルバイトしていた活版所や、『シグナルとシグナレス』の舞台の停車場、『黒ぶだう』の公爵別荘になった屋敷など、賢治作品のモデルになったとみられる場所が二十数か所がある。これらをつなぎ、賢治の『星めぐりの歌』のように回遊してもらうのが目標で、停車場が、その入り口になれば」と話している。

(2010年7月28日 読売新聞)

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