9月15日9時50分配信 産経新聞
有名デザイナーの手がけた商品には“付加価値”がつくのが当たり前。家具から雑貨まで「デザイナーズ○○」とくれば割高なものだ。ところが世界的デザイナー、佐藤オオキさんの率いるデザインオフィス「nendo」とのコラボ商品でありながら従来品よりも安いというデザイン界の常識を覆す商品が登場した。(篠原知存)
nendoが全面リニューアルを担当した消臭芳香剤「消臭プラグ」シリーズの製品発表会は8~10日、エステー(本社・東京都新宿区)のオフィスで開かれた。ミラノサローネでのインスタレーションやインテリアデザインなど空間表現にも実績があるnendoだけに、現代美術の展覧会といわれたらうっかり信じてしまいそうな展示空間が登場した。
パッケージをタイル状に並べたアプローチ、幾何学的な照明を設えた黒い小部屋…。視覚への刺激やリズム感、浮遊感は明らかな美的体験なのだが、飾られているのは消臭芳香剤…。そのギャップが新鮮。一般公開されなかったのがもったいないほど。
肝心の新商品は18日発売の「Shupatto!(自動でシュパッと消臭プラグ)」と「消臭プラグ」の2種類。いずれも陶器のような質感を持つプラスチックを使用し、丸みを帯びたフォルムで仕上げられている。パッケージもシンプルなものに。
「日本特有の価値観だと思っている『かわいらしさ』を狙った」というデザインの完成度は「さすが」の一言だが、注目されるのは、従来品よりも価格が下がったこと。素材の減量や部品の簡素化で、希望小売価格は「Shupatto!」が1400円から1300円に、「消臭プラグ」が770円から630円になった。
有名デザイナーによる“付加価値”の意味が変わるかもしれない。佐藤さんは「社外デザイナーは、なかなか価格まではコントロールできないポジションですが、今回は全社的に協力してもらえて、デザインによるコストダウンが可能になった」と語る。nendoというブランドイメージとしては微妙な気もするが、本人は「まったく気にならないですよ」。
エステーの鈴木喬社長は会見で「デザイン革命」によるシェア拡大をアピールした。たしかに売れ行きは気になる。商売繁盛というだけでなく“デザイン論”としても意味を持つかもしれない。