大正時代のレトロな雰囲気を残す島田市の映画館「みのる座」(同市本通6丁目)が、10日の「さよなら上映」を最後に1世紀近い歴史の幕を閉じる。子どもや家族連れ向けのアニメなどを上映してきたが、少子化に加え、藤枝市に1年前に複合型映画館がオープンしたことで、経営が難しくなった。さよなら上映当日は、山田洋次監督がトークショーに訪れる予定だ。(竹田和敏)
さよなら上映では、山田監督の「男はつらいよ」22作目で、島田市がロケ地になった「男はつらいよ 噂(うわさ)の寅次郎」が上映される。午前と午後の上映と、夜の山田監督トークショーとも、190席の整理券は出尽くしたという。
みのる座は1916(大正5)年開館。50年代に現社長の太田晴也さん(49)の父修平さん(80)が芝居小屋だった同館を創業者から引き継ぎ、当時全盛だった映画館に改修した。大正時代のれんが張りのタイルを残すなどレトロな建物について、閉館に際して建築専門家が調べたところ、文化的、建築的に貴重なものという。
修平さんは60年ごろに配給元の松竹のパーティーで山田監督と知り合ったという。山田監督の作品で、西田敏行主演の「虹をつかむ男」のモデルの1人になったといわれる。こうした縁から、太田さんが閉館の決意を山田監督に伝えたところ、ベルリン映画祭出席前で多忙だった同監督から「10日なら参加できる」との返事があったという。
太田さんは「地方の小さな映画館の閉鎖に山田監督が足を運んでくれるのは、普通ではありえない。みのる座の映画に寄せる夢を伝えることができる」と話している。