日本人女性2人目の宇宙飛行士、山崎直子さん(39)が乗る米スペースシャトル・ディスカバリーが米東部時間5日午前6時21分(日本時間同日午後7時21分)、打ち上げられる。準備は順調に進んでいる。今回の飛行で国際宇宙ステーション(ISS)滞在中の野口聡一さん(44)と、初の日本人2人の宇宙滞在が実現する。シャトルは今年退役の予定で日本人の搭乗は最後になる。
打ち上げ地のケネディ宇宙センターでは4日朝、発射台上のシャトル周囲の整備用の構造物が取り払われ、シャトル・ディスカバリーが姿を現した。同日夜には燃料の注入が始まった。
4日午後には、同センター近くのレストランで、山崎さんの家族が主催する記念パーティーが開かれた。日本から駆けつけた山崎さんの学生時代の友人や星出彰彦飛行士(41)ら約200人が参加した。隔離された施設にいて参加できない山崎さんに代わって、等身大の写真が用意され、参加者は並んで記念の写真を撮った。
会場には応援の寄せ書きや色紙が用意され、「宇宙で立派な仕事ができるよう、がんばりたい」と話す山崎さんのビデオメッセージが流れた。
山崎さんの長女・優希(ゆうき)ちゃん(7)は、宇宙へ行きたいという母の夢がかなうことを、自分のことのように喜んでいる。「ワクワクする。宇宙から帰ったら、ママとまたじゃんけんをして遊びたい」と目を輝かせた。
夫の大地(たいち)さん(37)によると、4日朝に山崎さんと打ち上げ前の最後の対面をした。「今までよくがんばってきた。2週間、悔いのないように、思う存分楽しんで」と声をかけると、「どうもありがとう」と応じたという。
大地さんは「あとは無事に打ちあがることを祈るばかりです。本当にこれまで長い間、訓練おつかれさまと言いたい」と話した。
山崎さんは1996年に東京大大学院修士課程(航空宇宙工学)を修了、当時の宇宙開発事業団に入り、99年に宇宙飛行士の候補に選ばれた。それから10年以上。千葉県松戸市に住む母親の角野喜美江さん(67)は「親としてかかわってきて、よく緊張感を持続して訓練を受けてきたと思う」と話した。
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高度約400キロを周回する国際宇宙ステーションには4日、米航空宇宙局(NASA)の女性飛行士トレーシー・コールドウェルダイソンさんら3人がロシアのソユーズ宇宙船で到着した。
この後到着するディスカバリーには、山崎さんのほかステファニー・ウィルソンさん(43)とドロシー・メカフリンデンバーガーさん(34)も乗り組み、史上初めて女性4人が宇宙に滞在することになる。山崎さんは「宇宙で4人そろうのが楽しみ」と話す。
初の女性宇宙飛行士、旧ソ連のワレンチナ・テレシコワさんが1963年に2日間滞在して「私はカモメ」という言葉を残してから半世紀近く。日本人では向井千秋さん(57)が94年と98年にシャトルで科学実験などをした。
NASAのまとめでは、これまで約50人の女性が宇宙飛行を経験。アイリーン・コリンズさん(53)ら2人はシャトルの船長も務め、ペギー・ウィットソンさん(50)はISSに6カ月間長期滞在して司令官も経験。女性が活躍する場は確実に広がっている。
女性は無重力で骨が弱りやすいなど、医学的に少しハンディがあるが、山崎さんの健康管理を担当する松本暁子医師は「2、3年かかる火星往復などでは問題かもしれないが、2週間程度では関係ない」という。山崎さんも「仕事内容や訓練に差はなく、男女は一つの個性でしかない」と話す。宇宙にファンデーションやクリームなどの化粧品を持って行く。
ディスカバリーのアレン・ポインデクスター船長(48)も「女性3人もプロ、男性4人もプロ。我々はとてもよいチームだ」と話す。
山崎さんは今回の飛行で、実験用の機材などの物資を運ぶ責任者「ロードマスター」を務める。日本の実験棟「きぼう」で使う冷蔵庫なども運び込む。ロボットアームを操作して、シャトルの耐熱タイルなどに傷がないかを確認する仕事もする予定。(山本智之、勝田敏彦=ケネディ宇宙センター〈米フロリダ州〉、園田二郎)