甲府市庁舎お別れ

 甲府市役所の庁舎は建て替えのため、30日で役目を終え、現庁舎での業務が終了する。79年前に完成した4号館は保存も検討されたが、老朽化が進んで耐震安全性を確保できず、7月から同館を含めすべて取り壊す。市は旧相生小などの仮庁舎に移転し、5月6日から業務を再開する。新庁舎は総事業費約110億円をかけて2013年3月に現庁舎跡地に完成する予定だ。

 市庁舎は1~4号館と別館がある。最も古い3、4号館は1931年、電話局の機能もあった旧甲府郵便局として完成した。鉄筋コンクリート造りの2階建てで、日本武道館を手がけた建築家山田守氏が設計した。

 同郵便局の移転に伴い、市は75年に4号館を買収。3号館も95年に取得した。

 4号館には完成当時、交差点側に玄関があり、アールデコ風の扉に特色があった。1階の窓の上までをタイル張りにし、その上部のモルタル部分は張り出したデザインになっている。

 4号館の室内は円柱と梁(はり)の間を曲線で結んでいるのが特徴だ。中2階の男子トイレには、高さ1メートル20、幅50センチほどの最近では珍しい大型の小便器がある。

 昨年、市民から4号館の保存を求める声が上がり、市は保存方法を検討してきた。だが、「山田氏がデザインした重要な部分が改修・撤去され、移築、復元に約8億円が見込まれる」などとして取り壊しを決めた。設計図や写真などは冊子にして残す。

 一方、1号館は61年に完成。鉄筋コンクリート造りの地下1階、地上5階建てで、東京タワーを手がけた県内出身の建築家、内藤多仲(たちゅう)氏が設計した。1階で窓口業務を行うカウンターは荘厳な大理石製だったが、03年度に市民が座れるように大理石を取り払い、低い位置のカウンターに替えた。

 市幹部は「4号館はかつて甲府市のシンボル的な建物で現庁舎に愛着がある。耐震性が増して安全に利用できる新庁舎に人が集まるようにしたい」と話していた。市は29日午前10時から閉庁式とお別れ会を開く。お別れ会では市民が庁舎を見学できる。

(2010年4月28日 読売新聞)

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