旧深川食堂,観光拠点に

昭和初期のモダン建築を伝える建物として、国の登録有形文化財に認定された江東区の「旧東京市深川食堂」(門前仲町1)が10日、「深川東京モダン館」として生まれ変わる。一時は解体も含めて検討された貴重な文化遺産は、区の観光・文化拠点として再スタートを切る。(横山就平)

 同館は昭和7年(1932年)、関東大震災の復興計画の一環として、被災者らに定食やカレー、コーヒーなどを安く提供するため、旧東京市が設置した市設食堂の一つとして完成した。鉄筋コンクリート造り2階建てで、正面外壁に施された丸いスチールサッシの窓やタイル張りの階段など当時としてはモダンな建築様式が採用されていた。

 東京大空襲で内部が焼け、戦後は改修されて職業安定所や内職紹介所、福祉作業所などに利用された。2006年、作業所の移転や老朽化で閉鎖されたが、完成当時、シンプルさを追求する最先端のモダン建築を伝える歴史的建造物として、区が保存を決定。昨年7月には、国の登録有形文化財に認定された。

 改装されたモダン館の1階は、江戸、近代、現代のテーマごとに町歩きを楽しめる観光案内所となり、2階の展示スペースは、文化イベントやギャラリーとして貸し出す予定。

 公募で同館のコーディネーターに選ばれた井村六美さんは、「昔からある観光名所でも、今の時代から見た魅力を提供できる施設にしていきたい」と話している。

 10日はオープニングイベントとして、近代建築の専門家による講演会などが行われる。問い合わせは、同館(電)5639・1776へ。

(2009年10月10日 読売新聞)
関連記事・情報

「危ない」転がる鉄製タイル

「龍ヶ崎、土浦で竜巻が発生、多数の住宅倒壊」。連絡を受け、牛久市を経由して、風は強いものの穏やかな田園風景を横目に見ながら、県道48号線から龍ヶ崎市大徳町に到着すると、周囲の風景は一変した。ビニールが吹き飛び、骨組みがぐにゃりと変形した農家のビニールハウス、屋根が吹き飛ばされたガレージが視界に飛び込んできた。

 路地を歩くと、所々でがれきの山が道をふさぎ、四方から落下音がする。5分ほど歩くと、「危ない」という叫び声が響き渡った。振り返ると、長さ3メートルはある鉄製のタイルがそばに転がっている。発生時間が通勤通学時間帯だったらと思うと、ぞっとした。

 水戸を出たとき、厚い雲に覆われていた上空は、いつの間にか青く澄みわたっている。一帯を歩くと、被害を受けた住宅などは、ほぼ一直線のラインに集中していることが分かった。自営業の男性(65)方を訪ねると、2階の寝室に通してくれた。男性は「一歩間違えば死んでいた」と話した。1、2階の窓ガラスはほとんどが割れ落ち、窓枠にはベニヤ板が張られている。室内には、外から飛び込んできたがれきとガラスの破片が散乱し、身動きが取れない。ふとベッドに目を移すと焦げ茶色の血痕が数滴、生々しく残っていた。(水戸支局 建石剛)

(2009年10月9日 読売新聞)

タイルアート「うながっぱ」を市に寄贈 多治見の“職人王”KATSUさん

多治見市笠原町で開催された「かさはら窯ぐれ祭り」で、同市のマスコットキャラクター「うながっぱ」をデザインしたタイルアート(縦85センチ、横80センチ)が市に寄贈された。

 制作したのは、会場でタイルアート教室を催した特殊造形装飾人のKATSUさん。人気番組「TVチャンピオン」でタイル職人王に輝いた腕前。4日にあった贈呈式で、KATSUさんが木股信雄副市長に手渡した。市役所の前に飾られる予定という。

 KATSUさんは「タイルの一大産地の笠原からタイルアートを発信することで、多くの人に笠原を知ってもらいたい」と話していた。

 (植木創太)

美濃焼を丸ごと体感 四大産地「窯場めぐり」

「美濃焼四大産地窯場めぐり」が3日、多治見、土岐両市の各会場で始まり、秋晴れの空の下、お気に入りの一品探しや窯元とのふれあいを楽しもうと大勢の人が訪れた。4日まで。

 土岐市駄知町の「駄知どんぶりまつり」では、昼時に地元の窯元が販売する丼で珍しい丼メニューを楽しむ「駄知どんぶりで何食べやーす」で大にぎわい。客たちはどの器で食べるか楽しげに吟味した。

 同市下石町の「下石どえらあええ陶器祭り」では同町裏山地区で、町のイメージキャラクターを探し歩く新企画「とっくりとっくんテーリング」が開かれ、子どもたちが路地でとっくんを探してはしゃいでいた。

 多治見市の笠原中央公民館の「かさはら窯ぐれ祭り」では、子どもらが特殊造形装飾人のKATSUさんの手ほどきでタイルアートに挑戦。「きれいにタイルをはめるのが意外に難しい」と苦戦する場面も。同市市之倉町の「陶の里フェスティバルin市之倉」では、「窯元ウオッチング」で町内の窯元をぶらりと巡り、お気に入りの器を買い求める人の姿が見られた。

 (林朋実)

障害者の絵や工芸を紹介 松本駅東西自由通路で3・4日

松本地域を中心とした障害者施設でつくる実行委員会が3~4日、「障害者施設のアート&クラフト展」を松本市の松本駅東西自由通路で初めて開く。県内13施設の利用者が制作した絵画や陶芸、手工芸など173点を展示するほか、自主製品を販売する。

 安曇野市の施設に通う吉田友樹さん(24)=松本市芳野=は身近な植物を描いたパステル画や、絵に短詩を添えてタイルに焼き付けた作品を出展。作業療法士が花の形をした型紙を作り、施設職員が吉田さんの言葉を書き留めるなど、共同で制作した。

 当日は、各施設の日ごろの活動を知ってもらおうと、利用者が作品に込めた思いや、多くの人の支援を得て作品が完成する様子を冊子にまとめ、来場者に配る。

 実行委事務局長で日本福祉大松本オフィス(松本市)所長の津田道明さん(60)は「作品の背景にある障害者と支援者たちからのメッセージを受け止めてほしい」と話している。展示は両日とも午前10時~午後4時。

(提供:信濃毎日新聞)

INAX 12商品が2009年度グッドデザイン賞を受賞

壁のように建築に溶け込むデザインで、リビングを魅力的に惹きたてるシステムキッチン『Granpiasse LEVILUS(グランピアッセ レビラス)』など(株)INAXの12商品が、2009年度グッドデザイン賞を受賞した。

『Granpiasse LEVILUS』は、「シンプルながらもデザイン性の高いシステムキッチン。意匠性を重視し、空間を有効に使用できる点」が評価された。今年度はこのほか、インテリアに調和して空間全体を上質にするシステムバスルーム『ALIGN(アライン)』(トステム株式会社と共同開発)、短い時間の中でも“心地よく・温まる”シャワーパネル『アクアネオ』、デザイン性と使い勝手を両立したキッチン用タッチレス水栓『ナビッシュ』、洗面器セット『GL-A536(スクエアタイプ)』『GL-A546(オーバルタイプ)』、日本の伝統的な焼き物の美を表現した手洗器シリーズ『XSITE手洗器/創の美 産地別シリーズ』、水栓をバックガードへ埋め込んだすっきりとしたデザインの洗面器・手洗器ユニット『NOSEL counter(ノセル カウンター)』、汚れにくく、お掃除しやすいシャワートイレシートタイプ『PASSO(パッソ)』シリーズ(アイシン精機株式会社と共同開発)、横長スリムでシンプルな温水洗浄便座一体型便器操作用リモコン『スマートリモコン』、深くシャープな陰影が住宅を洗練された雰囲気に包み込む外装壁タイル『スリットビート』、全形状同一価格の外装床タイル『クレド』『アレス』が受賞。またロングライフデザイン賞に優れた節水性と省エネを実現した『センサー一体型ストール小便器』が選定された。
これで同社の累計受賞商品は196件となった。

ヨックモック「創立40周年記念青山本店リニューアルオープン」

式会社ヨックモックは10月4日、創立40周年を記念してヨックモック青山本店をリニューアルオープンする。1978年4月に誕生し、東京・南青山のランドマークとして長年親しまれてきたヨックモック青山本店、タイル貼りの外観はそのままにおしゃれな大人の街にふさわしい空間と時間を提供する店としてリフレッシュする。

  中でも、カフェは夜の23時までアルコールや軽い食事も楽しめるラウンジへと生まれ変わる。店内、44席/テラス、32席計76席、ショップ、52平方メートル/ラウンジ(店内):116平方メートル、ラウンジ(テラス)、93平方メートル。青山本店は建物が出来て間もない1980年に第21回建築業協会賞を受賞している。建築業協会賞とはデザインだけでなく施工技術を重視しており、建築主、設計者、施工者の3社が互いに理解・協力して造り上げた優れた建物に贈られる賞。(情報提供:フードボイス)

[ベトナム株]10/1市況:両市場共に続落、地合い悪化を懸念、主力株安い

1) ホーチミン市場(HOSE)

 VNインデックスは、11.91ポイント(2.05%)下落し、568.99で終えた。売買高・売買代金共に減少した。第1節では僅かに反発したが、第2節では地合いの悪化が懸念され、売りが先行した。海外投資家は再び売り越しに転じた。

 株価:前営業日比で27銘柄が上昇、133銘柄が下落した。

 時価総額上位銘柄は、全面安の展開。バオベト保険(BVH)、DIC総公社(DIG)、総合フォワーディング(GMD)、リー冷蔵電気(REE)が大幅安だった。一方、タンタオ工業投資(ITA)とビンパールランド(VPL)は上昇した。キンド食品(KDC)は変わらずだった。

 サコムバンク(STB)、サイゴン証券(SSI)、ベトファンドマネジメント1(VFMVF1)、REE、ITAなどの取引が活発だった。

 海外投資家は売り越した。ベトコムバンク(VCB)、FPT、ペトロベトナム化学肥料(DPM)、ビナミルク(VNM)、ビンチャイン建設投資(BCI)などへ売りを入れた。一方FPTへは買いも多く入ったが、ネットでは僅かに売り越した。VNMは反対に買い越した。、ITA、第1ハティエンセメント(HT1)、KDCなどへも買いを入れた。

2) ハノイ市場(HNX)

 HNXインデックスは2.90ポイント(1.57%)下落し、181.39で引けた。売買高・売買代金共に大きくは変わらなかった。

 株価:前営業日比で、83銘柄が上昇、127銘柄が下落した。

 1兆ドン以上の時価総額上位銘柄も全面安の展開。ビナコネックス総公社(VCG)、バオベト証券(BVS)、サイゴンハノイ証券(SHS)などが大きく下げた。一方、キンバックシティグループ(KBC)は大幅に続伸した。

 金融関連銘柄で上昇したのは教育出版ファイナンス(EFI)のみだった。ソンダ銘柄では大幅高も依然目立ったが、ビナコネックス銘柄へは利益確定の売りも入った。

 海外投資家は買い越した。ベトナムダバコ(DBC)、ティエンフォンプラスチック(NTP)、ホアンマイセメント(HOM)、ペトロベトナム技術サービス(PVS)などへ買いを入れた。一方、VCG、キムロン証券(KLS)、ビナコネックス高級タイル(VCS)、ハイフォン証券(HPC)などへは売りを入れた。

快適!住まいのヒント:アウトドアリビングを楽しむ

アウトドアリビングってご存知ですか。「アウトドアリビングとは、リビングのように使用する屋外スペースのこと」(All About住宅用語より)。広い庭があれば申し分ありませんが、なかなか難しいもの。でも、ちょっとしたベランダやテラスがあれば、十分にお外気分を味わえます。

 今回は、ベランダやテラスなどをアウトドアリビングとして楽しむポイントをお伝えしましょう。

■ゾーニングを考える

 ベランダやテラスは、開放感を得たりや憩いのスペースにぴったりですね。リビングに隣接しているならば、リビングの延長として楽しみたいものです。

 まずは、部屋からベランダやテラスの見え方を整えていきましょう。

 特に気をつけたいのが、洗濯物やゴミ箱などの見え方。第二のリビングとしてくつろぎや団欒として使うときには、生活感あふれるものは、出来れば見たくないものです。しかし、ベランダやテラスは、物干しスペースや、外で使うものの置き場であったり、また、集合住宅では避難経路としても使われる場所。

 アウトドアリビングとして楽しむのであれば、物干しスペースやゴミ箱などは、壁に隠れたり、視角に入りにくいところに配置するといったゾーニングの配慮をするといいでしょう。

■床で空間をつなげる

 屋外空間を部屋と同じようなイメージでコーディネートをするとつながりが生まれ広々とした感じになります。アウトドアリビングとして演出する効果が高いのが床材です。上の画像をご覧ください。ベランダ部分がリビングに取り込まれて広く見えませんか。中と外の床材の色を揃えると、視線がつながってくるので、実際の広さも倍増して見えてきます。

 床の化粧材としてはパネル式のものが施工も手軽ですし、種類も豊富です。ウッドやタイル、プラスチックなどがありますので、部屋のイメージに合わせて選んでみましょう。ナチュラルなインテリアならば、ウッドや素焼き風のタイル、モダンな雰囲気ならば、磁器タイルやシンプルなデザインのプラスチックなども合いますよ。

■ガーデニングは無理をせず

 部屋から、花や緑が眺められると生活に潤いが増しますね。でも、いつも屋外空間を花や緑でいっぱいにするには、それなりのお手入れも必要です。草花が放置されて枯れてしまっては、却って見栄えも悪いばかり。

 「手間がかけられないわ」という方には、植物は数を絞り、葉の形や色を楽しむリーフガーデンや比較的手の掛からない多肉植物をコンテナに寄せ植えするといった方法もあります。植物が少ない分、ガーデンアクセサリーなどでカバーすれば、十分に目を楽しませてくれるはずです。

■家具はイメージ+機能性を

 屋外空間でお茶したり、軽食をとったりするのは気持ちのいいものです。外で使える椅子やテーブルなどがあると便利ですね。

 しかし、スペースには限りがあります。家具を選ぶときには、空間のイメージに合っていることはもちろんですが、外に常時置くのか、それとも必要なときに出し入れをするのかを考えましょう。

 常時置いておくものであれば、風雨に耐えられる材質を選びます。木製も良く使われますが、経年変化で色が変わってくることも念頭におきましょう。

 スペースに限りが有る場合には、必要に応じて出し入れできるアイテムが便利です。畳んでしまえたり、重ねて使えるものなどを選んではいかが。

 たとえば右のチェア。簡単に折り畳めて、しかもアルミ製で軽くて丈夫。肘と背がついているので、すわり心地も◎。畳むとステッキ状になり袋に入れてしまえるので、収納も簡単です。広げた状態でも奥行きが46センチと小ぶりなので、広くないベランダでも活用できそうです。

 また、室内用の家具として兼用できるものを選ぶこともよいでしょう。

 たとえばこんなベンチ。幅80センチ奥行き30センチと小ぶりですので、天気の良い日にベランダに出して、ちょっと腰掛けお茶を飲むのに良さそうです。リビングではスツールや花台としても活躍しそうですね。

 さらに、持ち運びができる充電式ライトやキャンドルを使えば、ムードも満点!おウチでビアガーデンやオープンカフェ気分を味わってくださいね。

 いかがでしたか。アウトドアを楽しむアイテムは豊富に出回っています。ベランダを片付けてちょっと椅子を出すだけでも、のんびり気分が味わえますよ。

「安心、安全」が一番の目的 民営化4年それが浸透してきた NEXCO西日本・石田会長に聞く

9月30日11時25分配信 J-CASTニュース

「民営化4年」を振り返るNEXCO西日本・石田孝会長
 「民間にできることは民間に」をキャッチフレーズに、2005年に行われた「郵政選挙」の大きなテーマの一つは「道路公団の民営化」だった。高速道路各社は09年10月1日に民営化から5年目を迎えるが、高速道路はどのように変わり、これからどんな方向を目指そうとしているのか。西日本高速道路(NEXCO西日本)の石田孝会長に聞いた。

■「お客様の不便をなくそう」の1番目はトイレ

――民営化後、何が一番変わったと思いますか。

  石田 仕事について責任意識が出てきたことですね。私は民間企業のあるべき姿として「自由、公正、博愛」の3つの規範を掲げていますが、4年近くやってきて、この49.5%ぐらいは達成できたのではないでしょうか。あと3年ぐらいしたら、90%程度にまで持っていける、と期待しています。まだまだ、昔の道路公団の体質が残っていて、「決められたことは、過剰なほどにきちんとやる」のですが、自由な発想で物事を進めるのは苦手なようです。

――具体的に、どのような点が目に見えて変わりましたか?

  石田 分かりやすいのは、サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)のお手洗いでしょうね。「公衆便所」から脱却して、デパート以上ホテル並のトイレに、数年以内に引き上げることを目指しました。ここを改善していかないと、お客様に満足を与えられないと考えました。約40%をお年寄りにも使いやすい洋式便器にし、その内の95%に洗浄機付便座を整備しました。女性に喜ばれるパウダールームも86箇所に設置しました。まだまだ進めます。

――民営化前のトイレはどんな状態でしたか。

  石田 いわゆる「公衆便所」ですよ。汚い、臭い。原因は、タイルの目地の太さにあったんですね。太いとカビが生えたりして、くさくなるのです。で、目地をどうして小さくするかに腐心しました。最後は「ラバータイル」というものを導入して、目地自体をなくすことにも成功しました。水がたまらなくなって、モップをかけるだけで水分が除去できるようになりました。また、吹きっさらし状態も問題でした。そうならないように、入り口に自動ドアを付けました。お客様から「ATMが置いてあるんですか?」なんて声をいただいたこともありましたね。

――他に「お客様を考える」という観点から実現したものはありますか?

  石田 結局、「お客様の不便をなくそう」につきるのです。1番目はもちろんトイレなのですが、2番目はSA・PAの店舗の営業時間です。車は24時間走っているのに、大半の店は20時には閉まる。これでは困ります。そこで、24時間営業のコンビニエンスストアをつくりました。すでに33店舗できています。さらに、メディカルコーナーも100店舗に設置し、ドラッグストアも4箇所オープンしています。車の中で具合が悪くなった人のために考えたことです。 さらに、「不便になりそうなこと」を食い止めようとも努力しています。元々ガソリンスタンドは合計82箇所あったのですが、原油価格の高騰や競争の激化で運営店から「撤退したい」と言う声が相次いで、71箇所にまで減りました。それでも撤退の要望が消えない。ただ、71という数は守りたいと思っています。詳細については検討中ですが、「他社と合弁で我々がガソリンスタンドを経営する」ということに踏み出そうとしています。ガス欠はお客様にとって不安ですからね。特に高速道路の初心者の方などに結構ガス欠は多くて、最近は増加傾向です。

――民営化では、全体の経営効率を上げることが求められていたように思います。

  石田 真面目な集団なので、「これをやるんだ」と決めた分に関しては、効率は上がっています。ただ、「100%の安全・安心」をお客様にお届けすることが私たちの一番の目的、価値であることは変わりません。それで、いくつかプロジェクトを作りました。ひとつが「逆走防止プロジェクト」。カーナビに情報を入れてGPS機能で検知し、逆走した際に、画面と音で警告を出す仕組みです。日産自動車さんと共同で開発にあたりました。2009年2月にはSAでデモンストレーションも行っています。逆走するとシートベルトが引っ張れられるようにして、物理的に伝える、というやり方も検討しています。全国で年1000件近く逆走事故は起こっていますので、対策は急務です。また、これまでは「路面が壊れたら、いかに速く修復するか」という点に重点を置いていたのですが、最近では「どうすれば壊れないか」という「予防」に力を入れています。

――効率化という観点からすると、いわゆる「ファミリー企業」については、どのような関係を築いたのですか。

  石田 われわれは「パートナー」と呼んでいます。道路補修を計画立案するのが弊社で、そのサポートをエンジニアリング会社が行います。実行するのがメンテナンス会社、という仕組みでした。ただ、これだけだと現場にやる気が起きない。「メンテナンス会社が自分で計画できるようにしよう」ということで、エンジニアリング会社とメンテナンス会社を合併させ、弊社から数百人単位でエンジニアリング・メンテナンス会社に出向させるといった人事交流も進めています。重複作業も少なくなって、効率化も進んでいます。社会貢献事業を進める時も、理念に共感してもらえましたし、比較的早く「融合」が進んでいると思います。

■日本を世界から信頼される国にしたい

――NEXCO西日本は、社会貢献活動にも熱心ですね。

  石田 西日本を元気にしたい。また、恵まれない国をサポートしていきたいと考えています。「必要以上の利益は取らない。損はダメだけど、ある程度利益が出たら、残りは社会に還元する」。昔の経営者は、こうしたマインドを持っていたはずですが、今は少なくなっているように思います。社会に対する奉仕です。日本を世界から信頼される国にしたいですね。日本が尊敬されなくなったら、「国籍無き世界の『根無し草』企業」になってしまう。そうなると、会社に対する信頼感もなくなってしまうでしょう。

――国境を越えた、スケールが大きい話になりますね。

  石田 07年からアフリカのスーダンでマラリアの治療に奔走する日本人医師のNPO法人に1000万円の寄付を始めました。リーマンショック以後、経済環境が急に厳しくなって、NPO法人から「NEXCO西日本さん、(支援の継続は)大丈夫でしょうか」という問い合わせがあったのですが、「大丈夫。安心してください」と答えました。「会社の経営が不調になったらやめる」というぐらいなら、最初からやらない方がいい。相手に迷惑がかかります。絶対に継続しないといけません。もっとも、社会貢献は海外中心というわけではありません。国内でも「産科医学生奨学基金」や福祉車両、車椅子の寄贈などSA・PAのテナントさんと協働していろいろやっています。

――SAの店舗にも、社会貢献のマインドが出てきた、と聞きます。

  石田 不景気で一般の小売店の売り上げが落ちる中、サービスエリアは4~7月で16%売り上げが伸びています。これは、いわゆる「1000円高速」のおかげなのですが、もとはといえば税金です。その分、社会に還元しないといけない。毎月第一日曜日にSA・PAのほぼ全商品が2割引になる「お客様感謝DAY」を行ったり、トイレを改善したり、バリアフリー化を進めたりしているのも、その延長です。このように、弊社の負担で取り組む社会還元とは別に、四国などの店舗では、第3日曜日に多くの商品が2割引になっています。西日本高速道路のSA・PAでは、多くの店舗(テナント)さんに、「社会に尽くす」という理念に共感していただいていて、テナントさんが独自に実施する還元策が広がっています。嬉しいことです。

――「公的な企業」という意識を強くお持ちのようですね。

  石田 私はそう思っています。「利益が出たから、みんなで山分けしよう」というのは違う。「皆さんに使っていただいて、我々の生業は成り立っている。社会と違う行き方をするのはやめよう」ということです。儲かったからといって、それを使って急に賃上げをするようなこともありません。この方針には社員も納得してくれています。

――ところで、新政権が打ち出している「無料化案」についてはさまざまな意見、見方が出ています。どのような問題点がありますか?

  石田 「救急輸送に役立つ」というのは高速道路の大きな利点です。例えば大分県のある街では、国道を使うと1時間半かかっていたものが、1時間で搬送できるようになりました。料金が下がって渋滞が起きると、この利点がなくなってしまいます。助かる命が助からなくなるのではと危惧しています。今後、政策を具体化するのであれば、その影響を十分考慮し、補完策も合わせて実施していかれることを期待しています。少なくとも、「渋滞が起こらない程度の値下げ幅にする」「ドクターヘリを置く」といった政策を同時に行う必要があるのではないでしょうか。
   また、メンテナンスもお金がかかります。その財源をどうするのかということも考え合わせて、十分な議論が必要だと思いますね。

――民主党は「高速道路の建設は、現状で計画されているほどには必要ないのではないか」「建設する分は、一般会計から持ち出せば良い」という議論もしていますね。

  石田 もう少し、大きな視野で考えて欲しいと思います。東京一極集中の今、疲弊しつつある地方を豊かにしようと思えば、利便性は保たないといけません。大都市と地方とでは、税のあり方は違ってくるはずです。地方がひとつひとつ、共同体を形成できるようにしないといけない。そのためのインフラが高速道路です。「地方の豊かさを向上させよう。その結果、精神的に豊かな社会を作ろう」という考え方が議論の根底になければならないと思います。

――知事の側は、そのような立場の人が多いようですね。

  石田 大阪の橋下知事は、激烈な言葉で地方の重要性や活性化を訴えていますし、宮崎の東国原知事も、高速道路の重要性を力説しています。毎年の恒例行事なんですが、1月5日朝に大分県の広瀬知事と会って、その足で電車に乗って宮崎県に向かうんです。会談では「我々はこれをやりますから、県はこれをしてください」という話をするのですが、このお二人の知事は、約束したことを確実に履行しようと最大限の努力をしてくれます。
   一番大きな問題は土地の取得なのです。土地を収用する権限は知事が持っています。道路建設計画が明らかになった後で、補償金を目当てに土地を買って木を植える「過密植栽(密植)」が相次いでいるのですが、東国原知事は現場視察をして「ここが原因で用地買収が進まないのか。けしからん」と、理解を示して下さっています。こうした障害は1年で半分ぐらいになりました。

――今後、民主党政権に、どのようなことを期待しますか?

  石田 「民」が「主」ですから、その名のとおりの政策を展開して欲しいです。「政治屋」ではなく「政治家」として、「政(まつりごと)」をやって欲しいと思っています。

石田孝さん プロフィール

いしだ・たかし
1943年福岡県北九州市生まれ。66年神戸製鋼所入社。取締役、専務執行役員、都市環境カンパニー執行副社長を経て2002年コベルコ建機社長。04年会長兼コベルコクレーン社長、05年西日本高速道路会長CEO、05年西日本高速道路サービス・ホールディングス会長CEO兼務。座右の銘は「あるがままに」。