思い出残そう タイルアート 今春閉校の久井高3年制作

生徒数の減少から3月末で閉校となる三原市久井町の県立久井高校(境垣内(さかいがいち)隆雄校長)で、最後の3年生全20人が、「学校生活の思い出を形に残そう」と、タイルアート作品「キズナ~校章~」(90センチ四方)の制作に取り組んでいる。生徒らは、3年間の母校での日々を胸に刻みながら仕上げの作業を進めている。作品は3月6日の卒業式と閉校式で披露される。

 卒業生らは、2年生の美術の授業で作った、約1万本のマッチ棒を17人で張り合わせ、色と凹凸だけで校舎を表現した作品「ありがとう学び舎(や)」が、県美展で入選したことが大きな自信となったことから、「全員で作品を作り、学校への感謝の気持ちを伝えよう」と共同制作を決めた。

 10月に作業を開始。作品が大きいため、縦18センチ、横22・5センチの石版20枚に分割して進め、最後に石版をつないで完成させる。生徒らは白、赤、緑のタイルを細かく砕き、石こうなどで固めて張り付けている。2年生の時に美術教師として県美展の出品作品を指導した、県立世羅高校非常勤講師の高橋里子さん(37)(世羅町)も応援に駆けつけ、生徒と一緒に放課後も作業を続けている。

 姉(20)も同高の卒業生という西迫奈津希さん(18)は「入学時にはあまり思い入れが強くなかった校章ですが、みんなで作っていると、県美展で入賞したことや文化祭で歌った思い出など色々なことがよみがえってきます」としみじみと語る。最後の野球部員として、07年夏の県大会に出場した湯村貴洸さん(17)も「先生や先輩、地域の人にお世話になった気持ちを作品を通して表したい」と意気込んでいる。

 同高によると、作品は卒業式と閉校式で披露された後、市に寄贈する案も出ている。閉校式では、記念碑の除幕式や地域住民による民謡なども予定されている。

■メモ

県立久井高校 1933年(昭和8年)に私立の公民中学として創設。組合立久羽坂青年学校を経て、48年に県御調農業高校久羽坂分校に。78年4月の本校移管で現在の名称となった。志願者数減少を受け、2007年7月に募集停止が決定。卒業生は記録が残る1948年以降だけで2218人に上る。

(2010年1月22日 読売新聞)

みやざき喜業人:宮崎高砂工業社長・仙台洋さん /宮崎

◇逆転の発想で新製品--仙台洋さん(67)
 1947年秋、秋田県に台風が上陸した。近くの川の堤防は決壊し、濁流が家々をのみ込んだ。

 「あれ、僕の家なの?」

 避難所から戻ってきた仙台少年の目に映ったのは、汚泥をかぶって朽ち果てたわが家だった。こんなにもたやすく家は壊れてしまうのか。

 あの時見た光景が、今の仕事への情熱となっているのかもしれない。

 高校卒業後、岐阜県の高砂工業に入社。タイル、茶わんなどを焼く炉の製造会社だった。事業拡大のため瓦の製造も始め、70年には県誘致企業として「宮崎高砂工業」を都城市内に新設、工場長として赴任した。

 れんがを製造し始めたころ、一つの試みが社運を変えた。規格外の瓦を粉状(シャモット)にして、れんがの粘土に混ぜたのだ。

 瓦のひび割れのクレームが端緒だった。冬場、瓦内に染みた水分が凍って体積が膨張することでひび割れは起こる。瓦やれんがの粘土は焼くことで水分が蒸発し、粒子レベルでの密度はより濃くなる。これが水気の進入を防ぐと考えられていたが、それでも瓦は割れた。ならば密度を求めるより、意図的に水が入りやすい空間を作ってやろうという逆転の発想だった。

 シャモットを混入して焼いたれんがは、内部に極めて細かな空間を作った。水は入りやすくなったが、逆に自然蒸発で出やすくもなった。

 「寒さに強いれんがを作ることは、結局、耐久性に優れたれんがを作ることにつながったんです」

 この手法で産廃れんがを次々に開発。廃棄物を使った「ECOれんが」は焼却灰、シラス、工場汚泥などを2~5割混入させる。環境れんがは、やがて主力商品になった。

 経営者として、「会社は大きな家だし、守らなければ」という。社員の家族が誕生日を迎えれば、メッセージカード付きの花を送る。社員の笑顔が何よりもうれしい。【小原擁】

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 ■メモ

 ◇宮崎高砂工業
 70年10月、都城市山之口町に設立。社員は34人。主力商品は瓦、れんが。瓦製造のノウハウを生かし96年に瓦くず、最終処分場の汚泥などを混ぜた循環型リサイクルれんがを開発。産廃物を利用して学校、公園などのまち作りに利用されている。01年に「グッドデザイン賞2001」、09年度の県「頑張る中小企業」にも選ばれた。

「東リ タイルカーペット」にエコマーク認定商品を追加

■東リ

 環境に配慮した商品を求める声に応じ、従来品をグリーン購入法適合品からエコマーク認定商品へ切り替え、「GA-8600EM」「GX-2200EM」の2品種2柄18アイテムを新たに発表。これにより同ブランドのエコマーク認定商品は全7品種8柄128アイテムに拡充され、多様化する用途に対応する。

 バッキング材の一部にタイルカーペット廃材から100%還元する「リサイクルシート」を採用し、再生材料比率25%(重量比)を実現。また、パイル糸の一部にリサイクルナイロン糸を使った。防汚・制電・防炎機能も備えており、安心と快適さを併せ持つ空間づくりをサポートする。

 いずれも1平方メートル当たり8700円(税別)。販売中。TEL06・6494・6605

火のない暖炉

家族や友人が集まってくつろぐリビングにあったらいいなと思うもの、それは暖炉。湿度が高くじめっと冷えるリマの冬も、暖炉があれば暖かく過ごせる。街の骨董(こっとう)品店に行けばおしゃれな火かき棒や暖炉専用の細いシャベルが売られており、道具自慢で会話が弾むことも。また赤々と燃える炎のそばで一人静かに読書をしていると、薪のパチパチと弾ける音に釣られ、一人、また一人と家族が集まってきて、楽しいだんらんが始まるのだ。

 一方、暖炉の設置はそう簡単なことではない。床や壁に耐熱性のタイルを張ったり、換気のため排気口や煙突を取り付けたりしなければならないのだ。一戸建てなら比較的設置も容易だろうが、アパート、特に中層階の場合は何かと制限もあって設置は難しいだろうと思っていた。

 そうした話を知人にしたところ、なんと簡易暖炉をプレゼントしてくれた。つぼのような形をしたシンプルな素焼きの暖炉だが、大きさも手ごろで小さな部屋でも圧迫感なく置ける。排気の問題を解決しなければならないが、いつかはぜひこの簡易暖炉に薪をくべ、暖かな空間にお客様をお招きしたいものだ。

 人々を魅了してやまない暖炉の最大の悩みといえば、掃除である。一戸建てに住むような家庭ならばメード任せで問題ないが、煙突掃除から灰の処理など、暖炉の掃除は想像以上に大変だ。また薪代もそう安くはなく、経済的な暖房器具とは言えない。友人カルメラの家にも暖炉があるが、「結局あんまり使ってないの」と自嘲(じちょう)気味。家族の写真や小物を置く、雰囲気のある飾り棚として使われている。

 それでもやはり、人々は暖炉のあるリビングに集まってくる。赤々と燃える炎だけでなく、懐かしい思い出の詰まった写真や大切な置物が、暖炉を囲む人々の心を暖かく包み込んでくれるのだから。

交通標識からみえる行政の無駄はなくならいのか

【PJニュース 2010年1月13日】JANJANニュース2009年8月24日付け写真記事「この交通標識、ほんとに必要?」で指摘したが、昨年夏、宮崎市の中心市街地に、歩行者と自転車の通行を区分する交通標識が設置された。しかし、設置場所によっては逆に通行の妨げになるのではないかと心配していたが、その心配が的中した。自転車による標識への接触事故をきっかけに、標識の設置から半年もたたないうちに、国土交通省宮崎河川国道事務所は一部地域でこれらの交通標識を撤去してしまった。果たして、この交通標識は本当に必要だったのだろうか。

歩道上における歩行者と自転車の錯綜(さくそう)などにより、歩行者と自転車が接触する事故は、最近10年間で約4.8倍に増加している反面、自転車は排気ガスや騒音を出さず、地球温暖化対策としても大いに期待できる交通手段である。

しかし、自転車走行空間(約7万9000Km)のほとんどは、歩行者と自転車が混在する自転車歩行者道となっている。歩行者と自転車が分離された自転車道等の整備延長距離は、約2500Kmと、全体のわずか約3%である。

そこで、2008(平成20)年1月、国土交通省と警察庁では、全国98カ所に「自転車通行環境整備モデル地区」を設置し、自転車道・自転車専用通行帯(自転車レーン)等の歩行者と分離された走行空間を、概ね2年間で戦略的に整備することとなった。目標は、「欧米並みの自転車先進都市の形成」である。日本における自転車先進都市とされている名古屋市でも、自転車道ネットワークはパリの1割程度である。

このような中、宮崎県では日向市と宮崎市が、自転車通行環境整備モデル地区に指定された。

宮崎市では、既存の自転車歩行者道を、歩道と自転車専用通行帯に分けるために、橘通り、高千穂通り、橘通りを南に進んだ橘橋南詰からの中村通りなどに、今回問題となった歩行者と自転車の通行を区分する交通標識が設置された。

多くの人でにぎわう繁華街では、既存の自転車道が整備されているので、特にトラブルになるようなことはないが、人通りの少ない中村通りでは、カラー化されているものの歩道と自転車専用通行帯の区別は、路面にペイントされた1本のラインだけである。そのライン上に歩行者と自転車の通行を区分する交通標識が無骨に立っているのである。

Machi-BBSの九州掲示板内の宮崎市のスレッドでも、この標識が設置された頃からこの問題が取り上げられていた。その声をいくつか紹介する。

・交差点同士が非常に近いところでは、5メートル間隔くらいで標識が立っているところがある。まあ、ひどいのなんのって。

・ほんとに中村通りの区分標識は邪魔だし、危険。非常に狭い間隔で立っており、必要性に疑問を感じる。

・支柱が目立たなくて昼でも危ないのに、夜間は更に危険!ケガ人が出る前に早く撤去すべきだ!

宮崎市中村地区の住民からの苦情などもあったのだが、実際に接触事故が起きてしまったことで、国土交通省宮崎河川国道事務所は1月8日までに、この地区に設置した27本の交通標識を撤去したことを、地元紙・宮崎日日新聞が伝えた。

1月11日の午後に現場へ向かうと、標識があった場所には真新しいカラータイルが埋め込まれていた。この標識がなくなったことで、歩道及び自転車道はとてもすっきりしていた。これで接触事故も起きないだろう。

モデル地区として、歩行者と自転車の通行をスムーズに行うために設置した交通標識が、逆に接触事故を誘引してしまったことは大きな問題ではないだろうか。

国の事業仕分けの対象になっていれば、間違いなく「必要なし」という判断が下されるであろうこの事業。標識1本あたりの設置費は、約6万5000円である。撤去された地区だけでも27本あり、設置費用は約175万5000円。さらに今回、これらの標識を撤去したわけなので、撤去費用も余計にかかったことになる。これらはすべて国民の税金である。

地元紙に取り上げられたことで、今回のことを知った市民も多いだろうが、ひっそりと撤去されただけに、行政の対応が問われる。どうしてこのような無駄なことばかりやってしまうのだろうか。

地元紙に対して同事務所は、「設置環境に問題があった。利用状況などを把握し、安全に考慮すべきだった」と話しているが、お役人的な発想で、馬鹿な話である。国土交通省だけではなく警察庁と合同で行っている事業だけに、その有効性はどのくらいあるのか、はなはだ疑問である。

全国にモデル地区を設置する前に、霞ヶ関のお役人のみなさんが自転車を積極的に利用し、まずは、国の機関が集中している東京都で実施したほうが良いのではないだろうか。

この世の中、いや、国が行っている事業の中には、まだまだ無駄なものがあると考える。政府・与党は、この3月から再び事業仕分けを行う予定にしているようだが、国民からも「このような事業は必要ない」と思われる事業を出してもらうようなシステムはできないものだろうか。【了】

X JAPAN ハリウッド殴り込み 世界初!映画の聖地でPV撮影

【ロサンゼルス=江川悠】人気ロックバンド「X JAPAN」が9日(日本時間10日)、ハリウッド中心地の複合商業施設「ハリウッド&ハイランド」の屋外特設ステージで、新曲「Jade」(発売未定)など4曲のプロモーションビデオ(PV)の公開撮影を行った。映画の祭典「アカデミー賞」の授賞式で知られるコダック・シアターも入る同施設内でアーティストがパフォーマンスを行うのは世界初。6日にロサンゼルス市内のスタジオでスタートした撮影は、14日まで同市内数カ所で総制作費5億円をかけて行われる。

◆制作費5億円をかけLA縦断
 映画の街に、ロックバンドとして“殴り込み”をかけるのが、いかにもXらしい発想だった。映画スターのサインなどが刻まれたブロックタイルで有名なチャイニーズ・シアターなどが並ぶハリウッド大通り。その中心地にある巨大施設の4階部分(高さ20メートル)に幅10メートル、奥行き10メートルの野外ステージが特設された。

 Xは1992年、海外進出を目標に「X JAPAN」に改名。97年に一度解散したが、07年に再結成し、アジア各地で念願の海外公演も実現させた。だが、08年に予定されていたニューヨーク公演が現在も無期限延期となっており、米国でメンバーがそろってファンの前で曲を披露するのは初めてだ。

 この日は、昨年5月にギタリストのSUGIZOが加入後初の新曲「Jade」のほか、海外ファンに向けて「I.V.」「ENDLESS RAIN」「Rusty Nail」のPV新バージョンの一部となるライブ風景を収録。98年に死去したギタリストHIDEさんの愛用ギターもステージに添えられた。

 ステージは底が透明になっており、その一部は約10メートルにわたって大通り上空に張り出している。片側2車線の道路をそれぞれ1車線ずつ規制し、撮影用の大型クレーンやレーザー光線を上空に照射するマシンを設置。上空で旋回するヘリもステージにライトを照射するなど、映画にも劣らない圧巻の演出だった。

 ドラムのYOSHIKIは昨年7月に持病の首ヘルニアを悪化させ、手術した。今も安静が必要だが、黒く塗ったコルセットを首に巻き、ドラムプレーを“強行突破”。また、ボーカルTOSHIも昨年秋に肋間(ろっかん)神経痛を患い、声が出にくい症状を訴えていたが、この日は伸びのある歌声を夜空に響かせた。

 地上1階の大型モニターにはステージの映像が映し出され、米国内や日本から駆けつけたファンがペンライトで「X」の文字を作りながら歓声を上げたり、楽曲の大合唱でメンバーを激励。午後4時から9時半の撮影中に、約8000人が会場に足を運んだ。

◆いろいろあった
 自ら総合プロデューサーとなってPV構想に着手したYOSHIKIは10日(日本時間11日)、ロサンゼルス市内の自宅で日本メディアの合同インタビューに応じ、前日の撮影について振り返った。

 「(ロサンゼルスの)ダウンタウンを見ながら『ENDLESS RAIN』を演奏したらジーンときて、涙が出てきちゃった。夢は追っていけばかなうものだと思いました」

 小学生の時、同級生のTOSHIとともにバンドを結成し、千葉県館山市民センターで初めてライブを開いてから約30年。ついにハリウッドのど真ん中に立った。

 「あそこまで行くまで大変だった。TOSHIとの関係とか、HIDEとの関係とか…。いろいろあったから感極まりますよね」

 こう話すと、YOSHIKIはサングラスの奥からこぼれ出る涙をぬぐった。HIDEの死、TOSHIとの確執、そして解散…。破滅へ向かっていたバンドが息を吹き返し、大きな目標だった全米進出を実現させた喜びはひとしおだった。

 今後は、延期となっているアメリカ、フランス公演の実現に向けて努力するとともに、アルバム制作のため、新曲のレコーディングに入るという。さらに、YOSHIKIは8月6-8日に米シカゴのグラントパークで開催される野外ロックフェスティバル「ロラパルーザ」への出演依頼が来ていることも明かした。

 「ロシアやドイツからも写真入りアルバムを送ってきたりして、(ファンが)世界中に広まっている。夢みたいですよ。ガラスのように飛び散ってしまう瞬間の美学じゃなくて、続ける美学もあるのかな」

 体はボロボロになっても、世界中にファンがいる限り、YOSHIKIは夢を追い続ける。

別府八湯・名人への道:/61 山田別荘 /大分

◇昭和初期の薫りの中で
 脱衣所から階段を下りた浴室には大きな窓から温かな光が差し込み、小さなタイルがぎっしりと張られた壁を照らし出していた。「へぇー」と深いため息をもらす妻の横で、長女日向子(4)は湯船に浮かぶザボン3個を引き寄せ「3兄弟だぁ」と喜んだ。

 北海道で電気事業会社を興し、別府ケーブル遊園(現ラクテンチ)の出資者でもあった故山田英三氏が1930(昭和5)年に建てた別荘が前身。それを戦後、旅館に衣替えした。

 1965年ごろを境に、近隣の旅館が鉄筋コンクリートの「ホテル」に建て替えられていった。そんな中でも、英三氏の孫にあたる先代の故省三氏は、木造の宿を守り続けてきた。その長女で、現女将のるみさん(40)も「今までの趣を失うことなく、快適な宿にしていきたい」という思いを胸に、じっくり、じんわりと建物を、そしてサービスを育てている。

 昭和レトロの雰囲気を残しつつ、改装した内湯もそのひとつだ。壁のタイルを大切に守り、木目の天井が美しい。なのに、黄色のプラスチックおけが不思議となじむ。

 「ケ、ロ、リ、ンて書いちょるな」

 気が付くと、日向子は、おけの底に書かれた文字をゆっくり読みながら、湯船に浮かんだザボンを移して遊んでいた。「今まで入った中で、ここが一番。また来ような」。日向子の口から、そんな言葉ももれた。【祝部幹雄】

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 ◇山田別荘(北浜)
 ナトリウム-炭酸水素塩泉を使った露天風呂と、ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉を使った内湯2室がある。肌に優しい湯はもちろん、改装した内湯の天井も味わい深い。立ち寄り湯は午前10時~午後3時で、入浴料500円。問い合わせは0977・24・2121。

伝統工芸解除 このまま消え去るのは…

 福岡県広川町の歩道には、特産の巨峰の絵と並び、県指定伝統的工芸品の広川下駄(げた)をアピールするげたの絵が描かれたカラータイルがはめ込まれている。

 広川町のある八女地方は森林が多く、昔から木工業が盛んな土地柄だった。なかでも広川下駄は軽くて弾力性のあるキリを使い、履き心地が良い高級げたとして全国に名をはせていた。

 ところが県による初の実態調査で、県指定35品のうち、広川下駄と福岡市の博多絞、北九州市の手吹きガラス、直方市の筑前ブンブン凧(たこ)の4品が後継者不在で生産されていないことが判明した。県は「指定品として紹介し続ければ誤解を招く」と近く指定を解除するという。

 博多絞は木綿と絹の絞り染めで、鹿子(かのこ)などの文様を多彩に施した伝統的な手作りによる手染めである。手吹きガラスは、アメのように溶けたガラスを吹きざおに巻き取り、花瓶などのガラス製品を作り出す。筑前ブンブン凧は、青竹でしっかりと骨組みを作り、その上から歌舞伎の役者絵などを描いたものだ。

 それぞれ国内外から高い評価を得ていたが、県が昨年夏から地元商工会などに聞き取り調査した結果、職人の引退で数年から10年以上前、生産されなくなっていた。生活様式の変化で製品が売れなくなったことが影響しているという。

 伝統的工芸品は、1974年に伝統的工芸品産業振興法が制定されて国の指定制度が始まったのを機に、都道府県でも広がった。九州でも大分県を除く6県が導入し、現在、計195品が指定されているが、国のように後継者育成などに財政支援をする都道府県は少ない。

 福岡県は県庁内での展示や観光パンフレットへの掲載をしているが、財政的な支援はない。継承を目的に経済的支援をしている宮崎県でも、日向焼など生産が途絶えた指定品がある。しかし、指定解除はせずに情報発信を続け、後継者が出てくるのを待つという。

 ただ、国指定品211品を見ても、2006年度の従事者は計9万3400人で、約30年前の3分の1に減った。30歳未満の比率も28・6%から6・1%に下がるなど、伝統工芸界は後継者不足と高齢化が進行して厳しい状況にある。

 それにしても、福岡県の「途絶えたから指定解除」という姿勢は、あまりにも冷淡すぎるのではないか。宮崎県のように何らかの形で技術を紹介し続けるなどして、復活を待ってもいいはずだ。

 「温故知新」という。その地で生まれた工芸品には、ものづくりの技術にとどまらず、その土地ならではの知恵がいっぱい詰まっている。古いものを大切にする中で、新しい発想も生まれてくる。

 地域文化が各地で見直され、日本的な暮らしや「ものづくり」が内外で再評価されている時でもある。地域に受け継がれてきた「伝統の技」がこのまま消え去るのは、やはりもったいない。

=2009/12/28付 西日本新聞朝刊=

緩和ケア病棟を新設 県立多治見病院、末期がん患者ら対象に

2010年3月に完成する多治見市の県立多治見病院新病棟の全体像が、明らかになった。既存の診療科を移転するほか、県内の公立病院では初の緩和ケア病棟や、ホテルの一室のような特別室(VIPルーム)を新設する。

 08年に着工。免震構造8階建て、延べ2万7347平方メートル。病床数は460床で、既存の病棟と合わせて627床。現在の許可病床数より54床減少となる。

 1階は解剖室、化学療法室、レストランが入る。2階は、リハビリ室以外は職員スペース。3~8階は各科の病室が移転。7階には、応接セットやシャワーなどを完備した「特別室(VIPルーム)」を設ける。屋上は池を設け庭園風。外壁に太陽光を反射し、ヒートアイランド現象を抑制するタイルを使用した。

 休止中の精神科病棟は新病棟3階に移し、再開する予定だったが、20人の看護師確保のめどが立たず、10年度いっぱいは休止のままに。末期がん患者らを対象にした緩和ケア病棟(新病棟8階)は、専門の医師がまだ採用できていないが、舟橋啓臣院長は「緩和ケアは必ず始める」と話している。

 (志村彰太)

秋の陶器まつり:東濃各地で蔵出しや廉売 4地区窯場めぐりも /岐阜

9月19日12時1分配信 毎日新聞

 東濃地方各地で秋の陶器まつりが始まる。10月3、4日に開かれる「美濃焼四大産地・窯場めぐり」では土岐市の駄知、下石と多治見市の笠原、市之倉の窯元が、自慢の製品を廉売。同11、12日に開かれる「たじみ茶碗(ちゃわん)まつり」では、多治見美濃焼卸センターの敷地に37社が49ブースで廉売や蔵出しを行う。いずれも、このシーズン最大の人出を誇るイベントで、関係者の期待は大きい。
 「窯場めぐり」は、別々に行っていたイベントを各地区の陶磁器工業協同組合が共同して行うようになったもので、今年で11回目。4地区のイベント内容は次の通り。【小林哲夫】
 【10月3、4日】
 <駄知どんぶりまつり>土岐市駄知町、セラテクノ土岐(どんぶり会館前)=窯元蔵出しめぐり▽穴窯体験▽大芋煮会▽1杯500円、10種類の駄知どんぶり限定販売▽1000種類のどんぶりが並ぶ、どんぶり広場▽使用しないどんぶりをリサイクルして来年のまつりで返却▽2500個の餅投げ=実行委(0572・59・8101)
 <かさはら窯ぐれ祭り>笠原中央公民館・広場=TVチャンピオン「KATSU」のタイルアート教室▽写真マグカップ・タイル焼き付けコーナー▽泥ダンゴ、らく焼きなどの体験コーナー▽手づくりクラフト横丁▽ガーデニング&エココーナー▽うまいもん・いいもん・どっさり市=実行委(0572・43・2141)
 <下石どえらぁええ陶器まつり>下石陶磁器工業協同組合周辺=裏山地区の窯元めぐり▽もろ板陶器市▽窯元自慢の品を展示する一窯一徴展▽キャラクター・とっくりとっくんを探してクイズに挑戦するオリエンテーリング▽うまいもん広場=実行委(0572・57・6101)
 <陶の里フェスティバルin市之倉2009>市之倉さかづき美術館と周辺=窯元、商社の蔵出し市▽22カ所の窯元やギャラリー、展示館をめぐるウォッチング▽ギャラリー与左エ門で、窯元38社がテーマに基づいた焼き物を一堂に展示▽写真コンテスト▽お祭り広場=実行委(0572・22・3719)
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 「たじみ茶碗まつり」は今年が32回目。昨年は23万人を集めたという。大廉売市のほか4000円で5000円分の商品券などもある。おもなイベントは次の通り。
 【10月11、12日】
 蔵出しセール▽味ののれん市▽地域物産展▽小学生対象の「お皿デザインコンテスト」入選者発表▽中学生対象「マグカップイラストコンテスト」入選者発表▽手芸品の展示即売▽キャラクター・うながっぱグッズ&グルメ大集合▽多治見ちゃわん一家・絵本&グッズコーナー▽陶器、木工、アクセサリーなどのクラフトマンの製品の展示即売=多治見美濃焼卸センター(0572・27・7111)